一般社団法人 情報システム学会
一般社団法人情報システム学会
情報システム
情報システムにおける人間の役割
著者:佐藤 敬
 
 情報システムは本来人間による情報の創造と利用活動と密接に関係しているから,情報システムに人的機構は不可欠である。一方,機械的機構のみからなる情報システムはありえない。なぜなら,人間社会にコンピュータがなくても情報システムは存在するが,コンピュータがそれ自身で情報を創造することはないからである。
 人的機構と機械的機構は情報システムの要素として相互に密接に関連しあっていなければならない。これらの二つの機構が,情報を収集し,蓄積し,処理し,伝達し,利用するために協働して機能していることが必要である。その場合に,機械的機構であるコンピュータ・通信機器が効率的に設計・製造・運用されていることが必要であるが,それにもまして重要なのは人的機構による情報の収集・蓄積・処理・伝達・利用が効果的に行われていることである。すなわち,情報システムにおいては,人間および手順,制度,法律など人間系や社会を中心とした視点が重要である。
 また,情報システムを開発する主体も人間であるから,情報システムの企画・設計・構築・運用という一連の開発活動が正しく行われることが必要である。たとえば,企画段階において,情報システムを開発する目的・仕様を正確に調査分析して決定しなければ,要求に合わない不適切な情報システムが構築されることになる。また,設計段階で誤れば,使い勝手が悪い情報システムや誤動作をする情報システムとなってしまうのである。
佐藤敬(2003)“5.16 情報システム
『情報社会を理解するためのキーワード :2』培風館 [85-95]から出版社の許可を得て転載します。
本稿は,情報システム学会会員である,佐藤敬氏の著作であり,学会の統一見解ではないことをお断りします。
 
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