情報システム
著者:中嶋 聞多
情報システムの研究といえば,ハードウェアやソフトウェアを中心としたシステム構成論や開発技法のような技術的な問題がまず頭に思い浮かぶ。確かにこの種の研究もまた情報システム研究の一部とみなし得る。しかし欧米では,“Information Systems”(複数形であることに注意:“情報システム学”と訳されるが,そのまま頭文字をとってISとよばれることも多い)は,技術的な側面よりはむしろ社会や組織体への応用を扱う社会科学,あるいはそれに近い複合領域とみなされている。
これに対しわが国では,いまだに技術中心の考え方が根強いものの,今日ではIS的な観点も徐々にではあるが浸透しつつある。このような変化の一つの契機となったのが,浦昭二を研究代表者とする“情報システムの教育体系の確立に関する総合的研究”(平成3-4年度科学研究費補助金研究)であった。そこでは情報システム学を,“情報システムの概念的枠組みを明確にし,その社会的側面の考察を深め,情報システムの企画,開発および運用・評価に関する実践的な知識・技術の体系化を図ることをめざす”学問領域として定義している。
ここでは,情報システム学の立場からIS研究の特徴と発展過程,ならびに研究方法について述べる。したがって,技術的な問題や開発技法についてはふれない。