Q1:21世紀の情報システムが期待されている役割は,何ですか
21世紀の情報システムには,社会にあっては公共性を保ちつつ社会の健全な発展,進歩を支え,促進するという使命があります。企業・団体などの組織では,競争優位となる経営戦略の根幹となります。また,経済の活性化の一翼を担うベンチャーの台頭と成長を促します。個人生活においては,生活基盤を安定させるとともに,個性豊かな人生を過ごすために欠かせない働きをもつようになります。
Q2:21世紀の情報システムを,人間の情報行動との関わりで捉えようとしているようですね。
そうです。人間の情報行動に適した情報システムでなければ,情報システムの存在意義は無いと考えます。したがって,人間の情報行動を研究します。人はどのように情報を収集し,判断し,行動するのか,理論的あるいは実践的な研究をおこないます。また,すでに現実に稼動している情報システムと人間行動との関わりから多くの知見を得ようとしています。
Q3:人間の情報行動の特徴として,正しい情報が得られても自分に不利な情報を否定することがありますね。
学会では,このような情報行動のマイナス面にも注目して研究します。また,実務の中からも事例を収集し,このようなマイナス行動への対応をどのようにしていくべきか,大いに議論を重ねていきます。
Q4:21世紀の情報システムには,消費者や企業ユーザのニーズをどう取り込むかが重要といわれていますね。
そうです。21世紀の情報システムには,マーケティングセンスが欠かせません。マーケティングは,利用者のニーズを正確に把握するための考え方と手法 をもっています。マーケティングセンスとは,社会や顧客,利用者のニーズをすばやく,タイムリーに,柔軟に対応しようとする態度です。利用者ニーズを反映した,人間中心の
情報システムを設計,開発,運用して,はじめて継続して利用される情報システムの資格をもつことができます。したがって,情報システムは,利用者との接点となる情報サービスを常に評価し,繰り返し改善していかねばなりません。
Q5:情報システムが利用者を従わせたり,利用者を排除するというようなこともあると聞きましたが・・・。
情報システム設計の際に,どこまで正確に利用者のニーズを把握し利用実態に目を向けるか,が大切です。そして,技術やシステムが利用者にどのような影響を与えるか,も考えなければなりません。システム設計や開発作業はイケイケどんどんになりがちなので,隠れていて見えない要因,小さな要因を切り捨てることがあります。そのような要因の中に,利用者に決定的な障害をもたらすものがあるかもしれません。こうした事態を避けるための方法(論)は幾つもありますが,“設計者,開発者が利用者に対してどれだけ優しい目をもてるか”が問われます。
Q6:情報やシステム,および情報システムに関する技術や方法論については,どのように考えていますか。
情報,システム,情報システムに関する技術や方法論の研究は,実務者の感性,あるいは,利用者の情報行動や利用ニーズとかけ離れたものであってはなりません。このため,研究者,技術者と実務家との交流を図り,人間中心の情報システムの設計,開発,運用のための技術や方法論を研究します。情報システムの概念的な枠組み,社会的な存在意義などを明確にして,その上で技術や方法論の創意工夫をすべきでしょう。
Q7:情報システム学の研究と体系化を進められると聞きましたが,情報システム学とはどんな学問ですか。
情報システム学は,まだ学問として体系化されていません。学問としての認知もこれからの課題です。情報システム学では,情報システムの概念(コンセプト)を明確にします。その社会的な存在意義や,企業組織などでの経営戦略上の役割使命を探りつつ,個人生活が期待する情報システムをも研究します。情報システム学の中心にあるのは,人間の情報に対する考え方,情報意識と情報行動です。情報システム学の体系化のためには,人間の情報行動と情報システムとの関係についての理論研究と,開発実例からの知見のフィードバックが必要です。したがって,研究者と実務家,両者の協働作業と相互コミュニケーションが無ければ,情報システム学を体系化することはできません。
情報システム学は,個人あるいは組織が要求する情報と,人間の情報行動とを考察することが基本になる学問です。また,情報技術それ自身よりも,むしろ情報技術の応用に関心があります。また,情報システムとは,“組織の中にあって情報を収集し,処理,伝達,利用する仕組み”である,といえます。そして,個人生活の中にも情報システムという仕組みが必要である,という認識も深まってきています。これらの仕組みは絶えず変化し成長しているので,情報システム学は多彩な学問分野と関連をもちつつ,精緻化し体系化しなければなりません。
Q8:研究者,技術者から実務家への働きかけを促し,また実務家から研究者,技術者への事例や体験のフィードバック,という相互コミュニケーションを重視しているそうですね。
情報システムは,社会や企業組織の中にあって重要な役割を果たしています。個人生活にも大きな影響を与えています。したがって,実務面での成功や失敗体験を研究者,技術者へフィードバックすることが,新しい研究視点や技術開発のへのヒント,新しい切り口を提供します。その結果,人間の新しい情報行動を発見できたり,情報技術の革新に向けての方向が示唆されます。一方で,実務家は,実際の問題解決に向けて新しい考え方,理論,そしてブレークスルーをもたらす新技術の応援を,研究者や技術者から求めています。ちょうど軸(シャフト)が車の両輪を支えて自動車を安全に走行させると同様に,研究者,技術者と実務家との相互コミュニケーションは安全で利用しやすい情報システムの発展の歩みを確かなものにするにちがいありません。
Q9:学会運営のモットーは何ですか。
“スピーディ,タイムリー,柔軟に”を掲げています。例えば,論文の執筆に関する相談窓口を設置し,会員からの問い合わせや相談にすばやく回答します。また,特定分野における研究者,技術者,あるいは実務家の紹介や同じような事例や経験を持つ実務家も紹介します。相談窓口はネット上にいつも開いています。
全国,いや世界で活躍している会員を組織的にまとめていくためには,相互のコミュニ―ケーションを促すような働きがなければいけません。この働きを支えるのが相談窓口です。相談窓口が働くことによって,“いつもオープンに開かれている学会”と言う印象を強くアピールできると思います。
Q10:論文の投稿は,どのようにするのですか。
論文の投稿,発表費を無料にします。これにより今まで発表の機会が少なかった人たちにも,情報システムに関する研究成果や,情報システムの設計,開発,運用などの経験に基づいた知見を気軽に投稿していただけるようになります。論文発表は,論文規定がホームページに掲載してありますので,参考にしてください。また,論文投稿についてのご質問や相談は,相談窓口にしてください。
2005年3月から論文投稿ができます。なお,5月以降になると,第1号誌が参考になるでしょう。
Q11:学会は,どんな活動を予定していますか。
学会の発足は,2005年4月ですが,これまで“人間中心の情報システムを研究するHIS(HIS(Human oriented Information Systems)
)研究会が長い間活動をしてきましたので,情報システム学会で継続しておこなっていきます。
これまでの活動へ
研究会,発表会の開催,WEBによる論文集の刊行を企画し,情報システム分野での研究やプロジェクトの成果を発表します。ホームページや相談窓口を通して,様々な情報交換や人的交流の場ができます。
なお,設立総会および記念式典は,2005年4月23日(土)を予定しています。都内23区内で場所は便利のよいところを探しています。
Q12:学会には,どんな人が入っているのですか。
情報やシステム,および情報システムの研究や実践に取り組んでいる学術研究者,技術者,産業界の実務家など,様々な方が学会の発起人となっています。会員は,情報システムの分野に限らず,学生,大学院生,心理学,行動科学,コンピュータサイエンス,社会学,都市学,経営学,コミュニケーション学などの専門分野の学術研究者,あるいは産業界の各分野の実務家などの方々を会員として募集中です。
詳しくは,入会案内へ
Q13:紹介がなくても会員になれるでしょうか。
はい,情報システム学会の趣旨に賛同していただける方であればどなたでも会員になれます。会員には,正会員,学生会員,賛助会員の3種類があります。
詳しくは,入会案内へ
Q14:地域交流,国際交流は,企画していますか。
まず,地域交流を活発にしたいと思います。学会はネットワークによる情報交換,交流を主としていますが,やはり顔を合わせての発表や検討,懇談が必要です。そこで,幹事役は手を上げていただくことになりますが,地域ごとに学会支部を設けたいと思います。支部での交流,情報交換は,地域のニーズを吸収するためにも有意義であると考えます。
国際交流については,学会の組織運営が安定する見通しが付いたところで企画したいと考えています。
Q15:人材の教育,育成についてはどうですか。
大変重要なテーマであると考えています。人間の情報行動をよく理解した上で,広い視野から総合的で創造的な情報システムを設計,開発できる能力をもつ人材(プロ,Professional)が期待されています。現在は,このようなプロを育成する場が少ないので,プロ教育はほとんど行われていません。学会活動宣言にあるように,学会は情報システム人材(ISP:Information Systems Professional)を育成するための環境を整えます。ISPのもつべき能力の標準化,および育成方法,資格制度などに関する研究を推進します。
Q16:企業組織などの経営者,経営幹部の中には情報システムの重要性を認識していない方々がいる,との指摘がありますが,この点はどうですか。
現場から願いをこめて,情報システムの開発を要請したとき往々にして経営者,幹部からの正しい理解が得られず,開発計画がしまい込まれたり,中止の憂き目に会うことがあります。“経営戦略にとって情報システムがどのような役割をもつのか,どのように競争優位を発揮するのか”を経営者が正しく知るための経営者教育も大切です。プロの人材育成とともに,経営者を啓蒙する環境も整えていきます。
Q17:学会として,社会への提言をしますか。
ぜひ,心がけたいと思います。情報社会の進展に伴い情報リテラシーの欠如によって,様々な情報アレルギー,情報拒否,誤診断による弊害が予想されます。また,情報システムが利用者を強制的に従えたり,情報行動を排除したりすることも考えられます。こうした,情報システム公害を未然に防ぐことと,人々にとって快適で利用し易やすく,かつ一番長続きするのは,人間中心に設計,開発,運営された情報システムであることを,繰り返し社会に訴えて生きたいと思います。情報システムの研究開発や人材,経営者の育成などについて,政策的な提案も実践していきたいと思います。