一般社団法人 情報システム学会
一般社団法人情報システム学会
概要
 情報システム学会(Information Systems Society of Japan)は,人間中心の情報システムを志向し,ビジネス・研究領域の融合や情報システム人材の育成を目的とした学会です。本学会は、日本学術会議指定した「協力学術研究団体」です。
情報システム学会での“情報システム”の捉え方
“情報システム”は
あなたに優しいものですか?
あなたに有益なものですか?
あなたに何かを強いていませんか?
そして,あなたは“情報システム”を
十分に使いこなしていると実感していますか?
“情報システム”は
人間活動を含む社会的なシステムです。
豊かな情報空間をもたらします。
単なるコンピュータ応用システムではありません。
人間の情報行動を支え,発展に寄与するものです。
組織活動に柔軟と革命を与えるものです。
2021年 山口高平会長 新年のご挨拶
一般社団法人 情報システム学会
代表理事 会長 山口高平
(慶応義塾大学理工学部)

 明けましておめでとうございます。一日も早くコロナ禍が収束し、皆様にとって、本年が良い年になりますように、お祈り申し上げます。さて昨年、菅内閣が新しく発足し、デジタル庁の新設が提言され、今年 9 月までに発足予定とされています。デジタル庁は、DX(デジタルトランスフォーメーション)に関する我が国の推進本部と言えますが、DX は当学会と関連が深く、ここでは、DX と当学会が提言する「情報システムプロデューサ」との関連性について考えてみたいと思います。
 現在、我が国は DX を早急に進めたい状況ですが、現存する情報システムは、閉じた ICT 環境であるオンプレミス(on-premises, 自社運用型)も多く、そこから開いた ICT 環境であるクラウドコンピューティング上の DX に移行することはそれほど容易なことではありません。オンプレミスは、社内で閉じたリソースを開発・利用することから、技術の老朽化、ブラックボックス化、システム維持困難などの課題が生じ、クラウドコンピューティング環境に移行していくにはいくつもの壁があります。
 また、ICT 環境の開放性の差異だけでなく、我が国の企業におけるビジネスマネジメントスタイルと DX の開放性の相違からも影響を受けるといえます。BCG が 2020 年 10 月 28 日に公表した「デジタルトランスフォーメーションに関するグローバル調査」では、世界で成功した DX の割合が 30%程度であるのに対して、日本で成功した DX の割合は 14%程度と報告されています。BCG は日本企業の DX の現状について「サイロ化するリスクが比較的高い」と指摘しています。日本の企業では、DX推進組織のトップが特定事業部門のトップになっているケースが多く、世界全体の企業と比較して、約 5 倍も多くなっているそうです。特定事業部門のトップが、組織全体の DX を進めれば、全社レベルのビジネスモデル戦略と整合性が取れないことも多く、企業の競争力が相対的に低下するリスクがあるわけです。
 一方、当学会では、2015 年から 2017 年において、伊藤重隆名誉会長を中心にした提言検討チームが、社会の提言コーナーにおいて、3 回に渡って、情報システムプロデューサの在り方について提言してきました(https://www.issj.net/teigen/teigen.html)。本提言では、情報システムプロデューサは、(1) ビジネス・業務に関する知識・スキル、(2) IT に関する知識・スキル、(3) ビジネスマネジメントに関する知識・スキル・能力を備える必要があり、特に(3)に関連しましては、コンセプト力(構造化された概念を形成する力)とリーダシップ力の重要性が指摘されています。本指摘は、全社レベルのビジネスモデル戦略の観点から DX を推進すべきであるという指摘と相通ずるものがあります。
 以上のことから、DX は IT 知識とビジネスモデルを擦り合わせることが重要であり、情報システムプロデューサの提言は、まさにその役割を担う人材の提言になっていると言えます。2021 年は、学会が主催するイベントを通して、この点について、会員の皆様と一緒にご議論できればと思っております。
 末筆ながら、本年、令和 3 年が皆様にとり、より幸せな年でありますようにお祈り申し上げます。

以上
2021年(令和3年)1月1日

 
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