情報システム学会 メールマガジン 2010.8.25 No.05-05 [4]

第3回シンポジウム 開催報告

 さる6月26日(土)慶応義塾大学日吉キャンパスにおいて、「大学院におけるシステム実践教育」〜実践する企業での教育,その基礎を育てる大学院・大学教育を考える〜 というテーマで第3回シンポジウムを開催しました。

 講演の資料等は、以下のURLに掲載されていますので、ここでは概要をお伝えしたいと思います。
http://www.issj.net/sympo/2010/100626_sympo.html

 南山大学情報理工学部・教授 沢田篤史先生からは「On the Job Learning 〜産学連携による新しいソフトウェア工学教育手法〜」についてご講演を頂きました。
紹介された取り組みは、座学による知識・技術の学習、模範的な答えが用意されたチーム開発課題に取り組むPBLを経て、製品レベルの実開発プロジェクト(OJL、大学教員、企業人PM・開発メンバと連携して学生が実製品レベルのシステム開発プロジェクトを遂行するもの)に繋げている点が特徴です。OJLによって開発された情報システムは企業の実製品/試作品や社内アプリケーションなど実際の業務の中で使われ、活かされています。
 実製品レベルのシステム開発プロジェクトに携わることで、座学ではなかなか伝えることが難しい現場技術者の品質意識の醸成などの教育効果が期待できるだけでなく、若手教員への刺激にもつながっているとのことでした。

 慶應義塾大学大学院システムデザイン・マネジメント(SDM)研究科・教授 前野隆司先生からは「文理を超えたシステムデザイン・マネジメント教育」というテーマでご講演を頂きました。
 システムデザイン・マネジメント研究科は、2008年に新設された新しい大学院です。既に何らかの専門性を有する社会人を主な対象として、文系・理系の枠組みにとらわれず、システムを広義に捉え(機械システム、社会システム、環境システムなど)、環境共生、社会協生、安心・安全、健康・福祉などの多様な価値の関係性をも考慮してシステム全体を創造的にデザインするための知恵とスキルを教授することを狙いとしています。実際、在学生の過半数が社会人、文系・理系の出身者も半分ずつとのことです。
 従来から大学院というと所属している研究室での研究成果を論文にまとめることを中心にして教育プログラムが組み立てられていますが、SDM研究科では4つの必修コア科目、必修デザインプロジェクト科目ALPSなどの授業での学習を中心としている点に特徴の一つがあります。

 慶應義塾大学理工学部・教授(本学会理事) 山口高平先生からは「サービス・イノベーション教育プログラムと情報システム」というテーマで発表をしていただきました。
 この教育プログラムは文部科学省「産学連携による実践型人材育成事業−サービス・イノベーション人材育成−」の委託を受けて、慶應義塾大学大学院(理工学研究科&経営管理研究科&システムデザイン・マネジメント研究科)が実施しているもので、修士学位に加えて、サービス・イノベーター(SI)認定証取得の要件を満たした学生にSI認定証を与えるものです。講演では、経済活動におけるサービス産業の役割が増大している状況に対応する本教育プログラムの特徴的な内容や教育事例などについて発表がありました。

 シンポジウムの最後に、伊藤重隆氏(みずほ情報総研,当学会理事)をモデレータに、3人の講演者によるパネルディスカッションが行われ、各講演で提起された課題についてフロアーからのご意見も交えたディスカッションが展開されました。

(文責 ISSJ理事 宮川裕之)