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         情報システム学会 メールマガジン
           2006.12.25 No.01-04
目次
[1] 新年を迎えるに当たって
[2] 第19回理事会報告(2006.12.2)
[3] 第20回理事会報告(2006.12.16)
[4] 第2回研究発表大会探訪記
[5] 東証問題に関する本学会からの提言
[6] 会員コラム 情報政策史をめぐって 第2回
[7] 図書の紹介

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[1] 新年を迎えるに当たって           ISSJ理事 細野公男

 設立されてから2年目の新年を迎えた情報システム学会の活動は,研究発
表大会や研究会の開催,学会誌やメルマガの刊行など軌道に乗りつつありま
す。これは会員諸氏のご支援,ご協力のおかげであり,理事会構成員の一人
としてお礼申し上げます。

 私はこの4月にほぼ40年間勤めた慶應義塾大学文学部を定年で退職しまし
た。文学部の人間が何故情報システムかと思われる方がおられるかもしれま
せん。たしかに世間一般では,情報=コンピュータで扱うものと考える傾向
が強いといえます。私の経歴もそれとは無縁ではありません。
 1968年に慶大文学部の図書館学科を図書館・情報学科に改組する一環とし
て,現在の理工学部から助手を採用することになり,たまたまそこに在籍し
ていた私がこの学科の一員となりました。その当時での意思決定の要因とし
て,「情報=コンピュータで扱う」という考えがあったように思います。し
かし,その後そうした意識は大きく変化しました。私の専門は情報検索で,
とくに理論や考え方を研究してきました。
 情報を必要とする人(利用者)の特徴やレベル,情報を探す目的・理由,そ
の際の状況などによって,情報検索の手法やシステムは大きく異なります。
したがって,情報の定義,得られた情報の効用・満足度などが,大きな関心
事となるのです。人間的な側面がきわめて強いといえます。このことは情報
システムにもあてはまります。

 人や組織が問題に直面したときまた新たな挑戦を試みるときに,入手した
データ(例:2006年10月分の四輪車生産実績は996,165台)やメッセージ
(例:追加利上げは来年らしい)のうち,その人の問題解決に役立つものが
情報になります。つまり情報か否かは,それが受け手にとって有用かどうか,
受け手の行動に影響するかどうかにつきるのです。受け手次第であり状況次
第といえましょう。なお,発信源(者)は誰,どこ,何かも,情報となるか否
かに影響します。したがって,情報システムでは,利用者ニーズや発信源の
特徴を把握・理解することが非常に重要なのです。これまでわが国で払われ
てきた情報の処理に関わる労力の多くは,データ(コンピュータ)処理の側
面が主であったといえます。しかし,今後はシステムの利(使)用者の側面
をもっと重視すべきでしょう。

 本学会のこれまでの2年間は揺籃期であり,手探りで種々の試みを行って
きましたが,2007年度は新たな飛躍の年としたいと思います。第一は理事会
組織のさらなる強化です。そのため,学会設立後始めての役員選挙を電子投
票の形態で行うための準備が開始されています。新たな形態での選挙を通じ
て得られる経験は,本学会にとって大きな財産となるでしょう。第二は学会
誌の刊行頻度を高めることや研究会活動の一層の充実を図ることなどがあげ
られます。また,会員同士の交流の場となるような月例懇話会の設置も今後
の検討課題でしょう。さらに,学会活動の幅を拡大するための戦略を考慮す
る必要もあります。その一例として,NPO化など学会体制の再検討があげら
れます。

 学会は学会員のために存在します。したがって,会員各位の積極的な意見
の開陳・交換および行動が,学会発展のための鍵であるといえます。会員諸
氏の積極的な関与をお願いして、新年のご挨拶と致します。

html版は http://www.issj.net/mm/mm0104/0104-1-rk-kh.html
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[2] 第19回理事会報告(2006.12.2)
 第2回研究発表大会に合わせて,開催されました。

 議題1.来年度総会の招待講演について
 議題2.来年度総会の開催場所について
 議題3.東証問題に関する提言について

 詳細はこちら
 → http://www.issj.net/gaiyou/rijikai.html
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[3] 第20回理事会報告(2006.12.16)
 月次に開催している理事会での議題です。

 議題1.情報システム学会平成18年度役員選挙実施に関する提案

 詳細はこちら
 → http://www.issj.net/gaiyou/rijikai.html
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[4] 第2回研究発表大会探訪記(高木、芳賀、松永)

 12月2日(土)に専修大学神田校舎で「人間中心の情報システムを考える」
を大会テーマに,第2回研究発表大会が開催されました。
 ・発表件数     44件
 ・大会参加者数   145名
 ・懇親会参加者数  54名
 と,昨年より増加し,盛況のうちに終了いたしました。
 以下に、大会の模様を紹介します。

 午前に行われた専修大学経営学部教授の櫻井通晴先生による大会開催校記
念講演「人間中心のCIOのベストプラクティス」,午後に行われた情報シス
テム学会北城恪太郎会長による「これからの企業におけるCSRのあり方」と,
社会システム・デザイナー横山禎徳先生による特別講演「社会システム・デ
ザインとは何か−先端課題解決へのアプローチ(仮題)」に出席者の多くの
方が参加されました。特別講演の横山先生は,悪循環に陥った社会全体の仕
組みを考え直す必要があるという社会システム・デザインという概念を披露
されました。情報システムを考える場合細部の議論に多くの時間を割くこと
になりがちですが,このような根本的な視点による考察の重要性を認識させ
られた講演でした。今回の講演のためにフランスから予定を早めて帰国し,
講演料でご自身の著書を参加者に配布されるなどの配慮を頂きました。
                             (高木義和)

 今回の大会テーマ「人間中心の情報システムを考える」をセッション名と
したF会場では5件の発表がありました。中嶋聞多氏からは,生命・社会・
機械の各情報を発展的にとらえる西垣理論を基盤にした,情報システム学の
新しい枠組みが述べられました。今や情報は,小学校から必須の概念です。
それにもかかわらず,わが国では基本的な意味があいまいなままになってい
ます。「情報システムと教育」の論議にもつなぐべき重要な提言が行なわれ
ました。
 松平和也氏の主張は,CIOは主任情報参謀であるべきだ,という啓発的
な内容でした。当然,情報収集のみでなく対外的な情報発信も課題として,
メルマガ創刊号に柴田亮介氏が書かれた,情報システムとしてブランドを確
立する役割も担うことになります。松平氏からは,情報システム部が電算部
として売却の対象にもなったという問題が提起されました。つまり,人間の
かかわる業務プロセスが情報システムのプロセスとして十分認識されず,そ
の中で特に機械情報(処理するプロセス)が疎外されていたのです。
 この点に着目されたのが甲斐莊正晃氏の発表です。ブランディング活動を
社内に向けて実施することにより,従業員の意識を改革,ERPなどの機械
情報システムも積極的に取り入れて高水準の業務プロセス確立をめざすもの
です。田沼浩氏の情報の評価と価値の議論も,このようなプロセスの中に位
置づけると,さらに新たな展開が得られると思われます。
 冨永章氏の発表は,ソフトウェアのまちがいの予防,すなわち社会情報か
ら機械情報への翻訳精度向上を課題としたものでした。多様な活動実績を総
括すると,第1に効果があったのは,失敗の原因分析からリスク管理をする
ことでしたが,第2に場合分けの網羅性が挙げられたのは,東証問題が裁判
にはいったタイミングだけに印象に残りました。
 5件の発表のいずれも時間の経過を忘れるほど議論が白熱,今後の情報シ
ステム学の研究に大きな展望を開くセッションでした。    (芳賀正憲)

 G会場の「情報システムと教育」セッションでは,初等・中等教育(3件),
高等教育(2件),企業(2件)それぞれから,情報および情報システムに関
わる教育方法やその問題点について報告がなされ,熱い議論が行われました。
 島田由美子氏(多摩大学)の発表では,実際に行われている各小中学校で
の教育内容にばらつきがあり,児童の発達段階にあわせた教育ができるよう,
適切な教科書が作られるべきであるという提言がなされました。佐々木桐子
氏(新潟国際情報大学)および竹村憲郎氏(専修大学)の2件の発表では,
それぞれ新潟県,東京都近郊の高等学校へ,普通教科「情報」に関するアン
ケート調査を行い,教育能力が不十分な兼担教員が多い実態,他教科への読
み替えなどの不足する学習時間など,期待とは違う様々な問題を指摘しまし
た。
 掛下哲郎氏(佐賀大学)からは,産業界が期待する知識・スキルと,大学
が育成する能力との関連を明らかにしていく必要があると提言がなされ,松
永賢次氏(専修大学)からは大学における実際の産学連携演習の事例とその
利点及び改善すべき点が報告されました。関弘充氏(富士通)からは,人間
力を重視したプロセス改善活動と,そのための管理者教育の実践報告がなさ
れ、杉浦充氏,青木美代子氏(日立インフォメーションアカデミー)からは,
コミュニケーションスキルを向上させるためのカリキュラムとフォローアッ
プ活動について実践報告がなされました。
 初等・中等教育,高等教育,企業と報告されたフィールドは異なるものの,
各発表者から提示された問題は相互に依存していることが議論から明らかに
なりました。その解決のためには,異なるフィールドの関係者が協力してい
く必要があると,参加者が意識することができた有意義なセッションでした。
                             (松永賢次)

 今回はじめての試みとして,「産業界からの論文発表を促進するための
ワークショップ」が研究発表大会と同時開催されました。午前の部は論文執
筆要領に関する一般的な知識と留意点についての解説,午後は事例研究論文
原稿を各自が査読することにより,論文発表のために必要知見を習得すると
いう実践的な内容でした。長時間のワークショップでしたが,13名の参加者
による熱心な意見交換や質疑が行われました。論文発表は非常に重要な学会
活動ですが,このような活動を通して,本学会の特徴である事例研究論文が
1篇でも多く出てくることを期待したいと思います。
 全てのセッションを紹介できませんでしたが,他のセッションでも同様に
活発な発表と質疑が行われました。今年参加頂けなかった方とは来年度の大
会でお会いできることを楽しみにしております。       (高木義和)

 詳細はこちら
 → http://www.issj.net/conf/issj2006/index.html

html版は http://www.issj.net/mm/mm0104/0104-4-tb-yt.html
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[5] 東証問題に関する本学会からの提言

 「東証における誤発注問題に関する提言」を,情報システム学会東証問題
検討プロジェクト(代表:上野南海雄)の名前で公表いたしました。
 この提言は,日経コンピュータのIT Proページでもコメント付きで紹介さ
れました。

 学会ホームページのトピックス(→ http://www.issj.net/)、および日
経コンピュータのWebページをご覧下さい。
 → http://itpro.nikkeibp.co.jp/article/NEWS/20061226/257793/
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[6] 会員コラム 情報政策史をめぐって

 第2回 「情報政策の定義と政策史調査」   国際大学GLOCOM 砂田薫

 情報政策史を調べるにあたって、最初にぶつかった壁は「そもそも情報政
策とは何か。どのような政策が含まれるのか」という定義をめぐる問題だっ
た。これを明確にしておかないと調査対象そのものが曖昧になってしまう。
ところが、1970年代から議論されてきたにもかかわらず、いまだに確立され
た定義がないらしいということがすぐに判明した。そこで、情報政策の定義
に関わる議論を眺めたうえで、調査対象とする政策の種類を決定した。今回
は、以上のような調査準備段階で考えたことを簡単に報告する。

 本文はこちら
 → http://www.issj.net/mm/mm0104/0104-6-jhsss02.pdf
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[7] 図書の紹介

・情報化白書2006
 日本情報処理開発協会,販売価:\6,300(税込)
 巻頭特集「情報化の未来を創る」のほか、情報経済を概観し、ユーザーの
IT利活用動向や情報政策と電子政府・電子自治体の動きを紹介するととも
に、情報セキュリティ、法制度整備等をまとめています。

 詳細はこちら
 → http://bookweb.kinokuniya.co.jp/guest/cgi-bin/wshosea.cgi?W-NIPS=9981461946
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・本メルマガ中の記名入りの記事は執筆者の意見であり,ISSJの見解を表明
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 編集委員:上野南海雄,小林義人,芳賀正憲,細野公男,堀内 一,
      山本喜一(五十音順)
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