情報システム学会 メールマガジン 2006.12.25 No.01-04 [1]

新年を迎えるに当たって

ISSJ理事 細野公男

 設立されてから2年目の新年を迎えた情報システム学会の活動は,研究発表大会や研究会の開催,学会誌やメルマガの刊行など軌道に乗りつつあります。これは会員諸氏のご支援,ご協力のおかげであり,理事会構成員の一人としてお礼申し上げます。

 私はこの4月にほぼ40年間勤めた慶應義塾大学文学部を定年で退職しました。文学部の人間が何故情報システムかと思われる方がおられるかもしれません。たしかに世間一般では,情報=コンピュータで扱うものと考える傾向が強いといえます。私の経歴もそれとは無縁ではありません。
 1968年に慶大文学部の図書館学科を図書館・情報学科に改組する一環として,現在の理工学部から助手を採用することになり,たまたまそこに在籍していた私がこの学科の一員となりました。その当時での意思決定の要因として,「情報=コンピュータで扱う」という考えがあったように思います。しかし,その後そうした意識は大きく変化しました。私の専門は情報検索で,とくに理論や考え方を研究してきました。
 情報を必要とする人(利用者)の特徴やレベル,情報を探す目的・理由,その際の状況などによって,情報検索の手法やシステムは大きく異なります。したがって,情報の定義,得られた情報の効用・満足度などが,大きな関心事となるのです。人間的な側面がきわめて強いといえます。このことは情報システムにもあてはまります。

 人や組織が問題に直面したときまた新たな挑戦を試みるときに,入手したデータ(例:2006年10月分の四輪車生産実績は996,165台)やメッセージ(例:追加利上げは来年らしい)のうち,その人の問題解決に役立つものが情報になります。つまり情報か否かは,それが受け手にとって有用かどうか,受け手の行動に影響するかどうかにつきるのです。受け手次第であり状況次第といえましょう。なお,発信源(者)は誰,どこ,何かも,情報となるか否かに影響します。したがって,情報システムでは,利用者ニーズや発信源の特徴を把握・理解することが非常に重要なのです。これまでわが国で払われてきた情報の処理に関わる労力の多くは,データ(コンピュータ)処理の側面が主であったといえます。しかし,今後はシステムの利(使)用者の側面をもっと重視すべきでしょう。

 本学会のこれまでの2年間は揺籃期であり,手探りで種々の試みを行ってきましたが,2007年度は新たな飛躍の年としたいと思います。第一は理事会組織のさらなる強化です。そのため,学会設立後始めての役員選挙を電子投票の形態で行うための準備が開始されています。新たな形態での選挙を通じて得られる経験は,本学会にとって大きな財産となるでしょう。第二は学会誌の刊行頻度を高めることや研究会活動の一層の充実を図ることなどがあげられます。また,会員同士の交流の場となるような月例懇話会の設置も今後の検討課題でしょう。さらに,学会活動の幅を拡大するための戦略を考慮する必要もあります。その一例として,NPO化など学会体制の再検討があげられます。

 学会は学会員のために存在します。したがって,会員各位の積極的な意見の開陳・交換および行動が,学会発展のための鍵であるといえます。会員諸氏の積極的な関与をお願いして、新年のご挨拶と致します。