ヤングレポートはそれらを踏まえて、次の通りの知的財産権の勧告を示している。
(1)知的財産権の重要性の認識、国内外に拡大すること。
(2)知的財産権の侵害行為の巧妙化と急速な技術革新によって、知的財産権の保護の在り方改善すること。
具体的には、次のとおりである。
(3)知的財産権の国際戦略の検討と制度の再検討
具体的には、次のとおりである。
(短期)これまでの途上国の強制実施権の認容の反対。他の先進諸国と共に知的財産権保護の強化を図る。
(中期)GATT(関税及び貿易に関する一般協定)に知的財産権を含めることを検討する。
(長期)知的財産権保護に関する一般協定を検討すること。
貿易関連の知的財産権はGATTのウルグアイ・ラウンドを経て、1994年知的財産権の貿易の一般協定であるTRIPS協定が成立することになる。これによって、ヤングレポートで求められたアメリカの知的財産権の国際戦略はそのまま現実のものとなった。WTO(国際貿易機構)の設立協定であるマラケシュ協定の成立によって現実のものとなった。
一方、アメリカ国内に目を向ければ、ヤングレポート以降、アメリカ通商法スペシャル301条の新設や関税法337条の改正によって、知的財産権保護の強化が鮮明になる。
引用・参照文献
「著作権法概説第13版」 半田正夫著 法学書院 2007年
「著作権法」中山信弘著 有斐閣 2007年
「著作権法第3版」 斉藤博著 有斐閣 2007年
「ソフトウェアの法的保護(新版)」中山信弘著 有斐閣 1992年
「特許法(第2版)」中山信弘著 有斐閣 2012年
「岩波講座 現代の法10 情報と法」 岩村正彦、碓井光明、江崎崇、落合誠一、鎌田薫、来生新、小早川光郎、菅野和夫、高橋和之、田中成明、中山信弘、西野典之、最上敏樹編 岩波書店 1997年
Michael L. Dertouzos, Richard K. Lester and Robert M. Solow, Made In America: Regaining the Productive Edge, MIT Press, 1989. MIT産業生産性調査委員会、依田直也訳、『Made in America アメリカ再生のための米日欧産業比較』、草思社 1990年
「米国発明法とその背景」、澤井智毅、経済産業調査会 2012年