評議員 渋谷 照夫
本学会は創立して8年目で比較的若い学会ではありますが、筆者も創立当時から継続して参加し議論させて頂く中で、その活動内容を見ますと継続した研究会や新しい取り組み(例えば、社会への提言、私の主張の会等)があり、研究の深さ/広さや会合開催/メルマガ等情報発信頻度で他の学会と比べても大変活性化してきていると思います。
また、先日の第8回全国大会・研究発表大会でも杉野会長様から、2015年の創立10周年に向かって、様々な新たな取り組みをしてゆこうとのお話しがありました。丁度、3年後に向かって、中期計画を策定して展開してゆくに時期にもあると考えます。
そのような現状の中で、評議員の立場から大変僭越ですが、本学会が情報システムの関係者、社会に対してより一層高い価値を提供し、多くの人から役立つと言われ評価を得られるように、課題といくつかの方策について述べさせていただきます。学会は一般企業体と異なり財務的な限界がありますがそうした組織体がどのように市場価値を高めていったらよいかの試みについて考えてみたいと思います。
・1つ目は、学会からのOutputに対する関連業界・顧客からのより高い評価の獲得です。
活動の一部で例えば社会への提言「アレキシサイミア(失感情症)への対応」では2012年8月に一般紙全国版へ掲載されましたがそうした例はまだ多くはないと思われます。本学会のOutputに対し大きな反響や役立ったという意見が寄せられるようにしたい。
・2つ目は、やはり顧客満足度向上の顕われとしての会員数の増大です。
ここ数年間の統計推移データからもこの課題テーマに異論はないと思われます。
これらの課題に対する取り組み方策を4点程、提案、述べさせて頂きます。
(1)「社会への提言」から「提言した施策の実現」への試み
「社会への提言」や「研究発表大会」での成果がOutputされていますが実行に移すことをより強化できないでしょうか。既存の組織(一般企業、官公庁等)からはお互いの利害関係や秘守義務ルールや意識の壁があり新しい考え方や方法論がなかなか広く普及し難いことは否めません。企業間の垣根や利害を超えた集団である学会であるからこそ、変革のキッカケを起こし実現するまでのフォローをしたいと強く思います。
提案した施策の実現へ向けた活動のフォローがなかなか難しいとしたら何が障壁で問題なのかを明らかにしたい。また、提案した中ですべての実現は難しいが第一歩として重要でかつ実現可能性の高いテーマをまずやってみるということが必要ではないでしょうか。
例えば次のような事を試みることはどうでしょうか。
例として組み込み系システム開発の課題の解決への具体策を作ってみる事を提案したい。
以上のような具体的な行動を踏み出すことによって、徐々にではあっても問題解決が進み、引いては学会の存在価値向上につながるのではと考えます。
(2)KPI目標、施策の達成状況、実行状況の見える化
ロードマップに基づき委員会活動、研究会活動、懇話会/私の主張、研究発表大会などが幅広く推進されています。主要な活動、体系化委員会など軸になる活動は年単位のプロジェクト計画として目標と施策を定めています。その施策の実行状況やKPI目標の達成状況を見える化しタイムリーに問題点を把握し対策を打ってゆくようにしたい。それにより施策や問題が解決されてゆく経過や実績が見える形で捉えることができます。そうすることで学会内部は勿論、外部に対しても取り組み状況や成果の正確な公開につながると思います。
(3)学会からの提供情報、サービスに対するお客様の真の声の把握と改善の取り組み
当学会からは有用な差別化できる取り組みが多くあると思いますが、実際の会員の声を積極的に聴いてみたい、把握したいと考えます。特にお客様である会員や情報システム関係者が一番悩んでいる所、難しい課題を押えたテーマでその解決策や糸口を見つけ出す情報やサービスになっているかについて評価してもらうことが重要と思います。
(4)外部団体へ入り込んだFace to Faceでのアピール強化
現状、学会内部での研究、討議の場やWeb/メルマガ等を活用しての活動広報の場はかなり充実していますが、外部の場へ主体的に出かけて行ってFace to Faceでの広報や説明を実行することも効果的と考えます。アピールの場としては、協賛団体(JUAS、JISA、IPA等)、日経コン/ITPro等のフェア/セミナー、主要大学(特に情報学部、情報システム工学系分野)、主要企業(ユーザ、IT系)など多々考えられる。こうした情報システムに関する専門家や関心の高いユーザが集まる場に積極的に入り込み、実際に本学会の活動内容と成果物、社会への提言などについて説明し、その価値の評価や改善指摘を受けることが、本学会の存在感と影響力をより高めるものと考えます。
本学会は創立からの経年期間、会員数等の絶対数では後発ですが、市場や社会へ積極的により踏み込んだ活動を実施し、「さすが情報システム学会だ!」と言われる、より高い評価を獲得したいものです。そして、本情報システム学会が日本のICT関連業界、社会の変革へ向けて継続して、リーダシップを発揮されることを願うものであります。