情報システム学会 メールマガジン 2011.11.25 No.06-08 [7]

連載 著作権と情報システム
第32回 文化庁案 著作権審議会第六小委員会中間報告(24)

司法書士/駒澤大学 田沼 浩

1.著作物

[3] 文化庁案「著作権審議会第六小委員会(コンピュータ・ソフトウェア関係)
       中間報告」(24)

「中間報告の結論」著作権法におけるコンピュータ・ソフトウェアの保護の問題に関する対策
2.法人著作の規定の整備
 ソフトウェアにそのまま著作権法第15条を適用させる場合、「法人等が自己の著作の名義の下に公表するもの」という要件が、解釈によって実態に合理的に対応しきれないことも想定できることから、法人著作の規定を整備する必要がある。
 プログラムの製作者が著作権者として同法第15条の適用を受けようとする場合、次の要件を満たす必要があった。
 (1)プログラムがその法人その他使用者の発意に基づいたものでなければならないこと。
 (2)その法人等の業務に従事する者が職務上作成するものであること。
 (3)その法人等が自己の著作の名義の下に公表するものであること。
 (4)その作成の時における契約、勤務規則その他に別段の定めがないこと。
 特に(2)について従業員ではない外部の者がプログラムの作成に関与した場合に問題となる。この外部の者が助言などだけで創作的行為を行っていないとき共同著作物の問題とはならないが、この者がプログラムの創作的行為に参加したときは、「独立した地位」を有することになり、企業とこの外部の者の共同著作物となる。(3)についても、プログラムが(a)未公表の場合、(b)無名で公表している場合、(c)著作者でない者の名義が付されて公表される場合に分けて考察されている。ます(a)の場合を考えると、自社の内部で使用するために作成されたアプリケーション・プログラムが想定される。法人としてこのようなアプリケーション・プログラムを法人名義で登録することは考えられず、公表することはない。(b)の場合を考えると、プログラムは無名で公表されることも多い。(c)の場合を考えると、他社に委託して作成したプログラムについて、システム設計・プログラム設計・プログラミング等をすべて受託会社が行ったプログラムの著作者は、未公開であれば受託会社が著作者と考えられるが、委託会社の法人名義で公表された場合、受託会社は(3)の要件を欠くことから著作者とは言えず、結局、委託会社とプログラムを直接製作した受託会社の従業員の共同製作になるものと考えられる。
 保護の享受者を明確にするために、中間報告に沿って昭和60年6月14日法律第62号に著作権法第15条からプログラムを除外し、同条の第2項にプログラムに適用すべき規定を設けられた。

著作権法第15条(職務上作成する著作物の著作者)
法人その他使用者(以下この条において「法人等」という。)の発意に基づきその法人等の業務に従事する者が職務上作成する著作物(プログラムの著作物を除く。)で、その法人等が自己の著作の名義の下に公表するものの著作者は、その作成の時における契約、勤務規則その他に別段の定めがない限り、その法人等とする。
2 法人等の発意に基づきその法人等の業務に従事する者が職務上作成するプログラムの著作物の著作者は、その作成の時における契約、勤務規則その他に別段の定めがない限り、その法人等とする。

引用・参照文献
著作権法概説第13版、半田正夫著、法学書院、2007年
著作権法、中山信弘著、有斐閣、2007年
ソフトウェアの法的保護(新版)、中山信弘著、有斐閣、1992年
岩波講座 現代の法10 情報と法、岩村正彦、碓井光明、江崎崇、落合誠一、鎌田薫、来生新、小早川光郎、菅野和夫、高橋和之、田中成明、中山信弘、西野典之、最上敏樹編、岩波書店、1997年