IX その他
著作権と他の知的財産権(特許権)の重複適用について、どのように調整すべきかが検討された。
特許権の保護期間と著作権の保護期間が異なることから起きる問題で、特にライセンス契約を結ぶ場合、特許権の保護期間終了後も著作権の保護期間に縛られる可能性がある。
特許権と著作権の帰属した者が同一であれば大きな問題はないが、その帰属が異なる場合、どのようにそれぞれの権利の帰属を考えるのか。
特に(2)について、著作権と特許権が重複し、かつ帰属の異なる場合、権利関係(権利の抵触)の問題が生ずる。そのため、特許法第72条には「特許権者、専用実施権者又は通常実施権者は、その特許発明がその特許出願の日前の出願に係る他人の特許発明、登録実用新案若しくは登録意匠若しくはこれに類似する意匠を利用するものであるとき、又はその特許権がその特許出願の日前の出願に係る他人の意匠権若しくは商標権と抵触するときは、業としてその特許発明の実施をすることができない」という権利調整規定がある。意匠法第26条第1項にも、「意匠権者、専用実施権者又は通常実施権者は、その登録意匠がその意匠登録出願の日前の出願に係る他人の登録意匠若しくはこれに類似する意匠、特許発明若しくは登録実用新案を利用するものであるとき、又はその意匠権のうち登録意匠に係る部分がその意匠登録出願の日前の出願に係る他人の特許権、実用新案権若しくは商標権若しくはその意匠登録出願の日前に生じた他人の著作権と抵触するときは、業としてその登録意匠の実施をすることができない」と同様の規定がある。更に同条第2項には、「匠権者、専用実施権者又は通常実施権者は、その登録意匠に類似する意匠がその意匠登録出願の日前の出願に係る他人の登録意匠若しくはこれに類似する意匠、 特許発明若しくは登録実用新案を利用するものであるとき、又はその意匠権のうち登録意匠に類似する意匠に係る部分がその意匠登録出願の日前の出願に係る他人の意匠権、特許権、実用新案権若しくは商標権若しくはその意匠登録出願の日前に生じた他人の著作権と抵触するときは、業としてその登録意匠に類似する意匠の実施をすることができない」として、著作権との権利を調整する規定を設けている。ところが特許法にはそのような規定がないため、検討を要する旨が中間報告で指摘されている。
ただし、上記検討課題について、現在まで具体的な法改正はなされていない。よって、(1)プログラムの保護期間は他の著作権と変わらず、(2)著作権者と特許権者の権利関係は相互に抵触しないものとして個別に認められ、(3)一つの行為で著作権と特許権の両方を侵害するものも認められ、(4)著作権に関しては法人でも著作者になれる。
引用・参照文献
著作権法概説第13版、半田正夫著、法学書院、2007年
著作権法、中山信弘著、有斐閣、2007年
ソフトウェアの法的保護(新版)、中山信弘著、有斐閣、1992年
岩波講座 現代の法10 情報と法、岩村正彦、碓井光明、江崎崇、落合誠一、鎌田薫、来生新、小早川光郎、菅野和夫、高橋和之、田中成明、中山信弘、西野典之、最上敏樹編、岩波書店、1997年