V 権利の制限
三 プログラムの複製、翻案等について権利者の許諾を得られない場合の措置を設けることの必要性について【2】
(3)第69条 商業用レコードへの録音等
著作権法第69条は、「商業用レコードが最初に国内において販売され、かつ、その最初の販売の日から3年を経過した場合において、当該商業用レコードに著作権者の許諾を得て録音されている音楽の著作物を録音して他の商業用レコードを製作しようとする者は、その著作権者に対し録音又は譲渡による公衆への提供の許諾につき協議を求めたが、その協議が成立せず、又はその協議をすることができないときは、文化庁長官の裁定を受け、かつ、通常の使用料の額に相当するものとして文化庁長官が 定める額の補償金を著作権者に支払って、当該録音又は譲渡による公衆への提供をすることができる」としている。昭和58年当時プログラムを商業用レコードとして録音していたとは想像できないことから、プログラムについて本条が適用できるとは考えにくい。
(4)第70条 裁定に関する手続き及び基準
著作権法第70条は、前述(1)〜(3)に関する手続き及びその基準を定めた規定である。
よって、プログラムの複製、翻案等について権利者の許諾を得られない場合、公表されたプログラム又は相当期間にわたり公衆に提供され、若しくは提示されている事実が明らかであるプログラムの強制許諾は、著作権者の不明その他の理由により相当な努力を払ってもその著作権者と連絡することができない場合に限られることから、中間報告では、これ以外にプログラムの複製、翻案等を強制許諾させる制度が必要かどうかについて検討されている。
引用・参照文献
著作権法概説第13版、半田正夫著、法学書院、2007年
著作権法、中山信弘著、有斐閣、2007年
ソフトウェアの法的保護(新版)、中山信弘著、有斐閣、1992年
岩波講座 現代の法10 情報と法、岩村正彦、碓井光明、江崎崇、落合誠一、鎌田薫、来生新、小早川光郎、菅野和夫、高橋和之、田中成明、中山信弘、西野典之、最上敏樹編、岩波書店、1997年