連載 著作権と情報システム 第24回
司法書士/駒澤大学 田沼 浩
1.著作物
[3] 文化庁案「著作権審議会第六小委員会(コンピュータ・ソフトウェア関係)
中間報告」(16)
V 権利の制限
三 プログラムの複製、翻案等について権利者の許諾を得られない場合の措置を設けることの必要性について【1】
権利者(著作権者)の許諾を得られない場合の措置について、著作権法には、第67条、第68条、第69条、第70条による裁定による著作物の利用が規定されている。これらの規定は、文化庁長官の裁定等による強制的に著作権者に代わって許諾を得る制度である。
(1)第67条 著作権者不明等の場合における著作物の利用
著作権法第67条第1項は、「公表された著作物又は相当期間にわたり公衆に提供され、若しくは提示されている事実が明らかである著作物は、著作権者の不明その他の理由により相当な努力を払ってもその著作権者と連絡することができない場合として政令で定める場合は、文化庁長官の裁定を受け、かつ、通常の使用料の額に相当するものとして文 化庁長官が定める額の補償金を著作権者のために供託して、その裁定に係る利用方法により利用することができる」として、プログラムを作成した者が不明など著作権者と連絡することができない場合に、文化庁長官の裁定等による強制的な許諾を求めることができるものと考えられる。
(2)第68条 著作物の放送
著作権法第68条第1項は、「公表された著作物を放送しようとする放送事業者は、その著作権者に対し放送の許諾につき協議を求めたがその協議が成立せず、又はその協議をすることができないときは、文化庁長官の裁定を受け、かつ、通常の使用料の額に相当するものとして文化庁長官が定める額の補償金を著作権者に支払って、その著作物を放送することができる」としている。昭和58年当時プログラムを著作物として放送していたとは想像できないことから、プログラムについて本条が適用できるとは考えにくい。
・著作権法概説第13版、半田正夫著、法学書院、2007年
・著作権法、中山信弘著、有斐閣、2007年
・ソフトウェアの法的保護(新版)、中山信弘著、有斐閣、1992年
・岩波講座 現代の法10 情報と法、岩村正彦、碓井光明、江崎崇、落合誠一、鎌田薫、来生新、小早川光郎、菅野和夫、高橋和之、田中成明、中山信弘、西野典之、最上敏樹編、岩波書店、1997年