連載 著作権と情報システム 第23回
司法書士/駒澤大学 田沼 浩
1.著作物
[3] 文化庁案「著作権審議会第六小委員会(コンピュータ・ソフトウェア関係)
中間報告」(15)
V 権利の制限
二 プログラムの実行に伴う複製、翻案等について著作権を制限することの必要性について
昭和58年当時の実態として、プログラムを実行するために、磁気テープから磁気ディスクに複製したり、保存のために磁気ディスクから磁気テープに複製することが行われていた。また、利用しやすいようにプログラムに変更を加えることも頻繁に行われていた。そのことから中間報告では、(1)プログラムの複製物の正当な権利者に対して、プログラムの実行、保存を目的とした複製について、公正な利用として、著作権者の許諾を得なくても複製できるようにすること、(2)プログラムの複製物の正当な権利者に対して、公正な利用としてコンピュータを実行するために必要な範囲内で当該プログラムを改変することを認めることを示している。
ここで注意すべきことは、プログラムの複製物の正当な権利者に対して、改変することをどの範囲まで認めるのかというだけではなく、改変したプログラムを二次著作物(複製物)として認めることができるかということも考える必要もある。公正な利用としてコンピュータを実行するために必要な範囲内での改変を認めているだけであって、改変したプログラムを二次著作物(複製物)として自由に譲渡、貸与することを認められているわけではない。もし改変したプログラムを二次著作物(複製物)として自由に譲渡、貸与することまで認められれば、コンピュータを実行するために必要な範囲内を超えて、明らかに公正を欠く利用と考えられるからである。中間報告では、プログラムの改変による複製物の自由に譲渡、貸与することを認めることは妥当ではないという結論を示している。
・著作権法概説第13版、半田正夫著、法学書院、2007年
・著作権法、中山信弘著、有斐閣、2007年
・ソフトウェアの法的保護(新版)、中山信弘著、有斐閣、1992年
・岩波講座 現代の法10 情報と法、岩村正彦、碓井光明、江崎崇、落合誠一、鎌田薫、来生新、小早川光郎、菅野和夫、高橋和之、田中成明、中山信弘、西野典之、最上敏樹編、岩波書店、1997年