情報システム学会 メールマガジン 2010.1.1 No.05-09 [13]

連載 著作権と情報システム 第21回

司法書士/駒澤大学 田沼 浩

1.著作物

[3] 文化庁案「著作権審議会第六小委員会(コンピュータ・ソフトウェア関係)
       中間報告」(13)

V 権利の制限
 一 権利を制限する規定の再検討
 著作権法には公正な利用を目的として著作権の権利を制限する規定(第30条以下)が設けられている。プログラムにも著作権法が適用された場合、当然著作権の権利を制限する規定も適用されることになる。
 中間報告では、当時の著作権法の中でプログラムに適用されるであろう第30条、第35条、第42条等について、具体的に検討されている。

(1)第30条 私的使用のための複製
 著作権法第30条第1項は、「著作権の目的となっている著作物は、個人的に又は家庭内その他これに準ずる限られた範囲内において使用すること(「私的使用」)を目的とするときは、」原則として「その使用する者が複製することができる」ものとしている。昭和59年当時、パソコンが徐々に家庭に普及を始め、このようなパソコンでもプログラムを複製する機会が増加し始めた頃のことである。確かに限られた範囲(個人的、家庭的等)ではあるため、中間報告では、プログラムの複製について第30条の私的使用の規定を適用しても、そのことでプログラム以外の著作物よりプログラムの著作権者を不当に害するものにはならないと判断している。要するに、私的使用を目的とするプログラムの複製を容認するものとしている。
(2)第32条 引用
 著作権法第32条第1項は、「公表された著作物は、引用して利用することができる。この場合において、その引用は、公正な慣行に合致するものであり、かつ、報道、批評、研究その他の引用の目的上正当な範囲内で行なわれるものでなければならない」と規定して、本条の正当な範囲内であれば引用は可能となる。プログラムに関しては、プログラムの各種解説書や論文などを作成する場合に、他人の作成したプログラムを載せることは目的上正当な範囲内の引用と考えられるが、他人の作成したプログラムを使って新たなプログラムを作成すること(リバースエンジニアリングによる場合を除く)は公正な慣行に合致するものではなく、目的上正当な範囲内の引用とは言えないと中間報告では判断している。要するに、他人の作成したプログラムを使って新たなプログラムを作成する場合、プログラムの著作権者(著作者も含む)から利用の許諾を得てから作成しなければならないということであり、引用と称して著作権者(著作者も含む)の許諾なく新たなプログラムを作成すれば、著作権(著作者人格権も含む)の侵害となる。

引用・参照文献
著作権法概説第13版、半田正夫著、法学書院、2007年
著作権法、中山信弘著、有斐閣、2007年
ソフトウェアの法的保護(新版)、中山信弘著、有斐閣、1992年
岩波講座 現代の法10 情報と法、岩村正彦、碓井光明、江崎崇、落合誠一、鎌田薫、来生新、小早川光郎、菅野和夫、高橋和之、田中成明、中山信弘、西野典之、最上敏樹編、岩波書店、1997年