製品(あるいは技術)ライフサイクル(Product Life Cycle : PLC)とは、製品・技術はその生命(ライフサイクル)において導入期、成長期、成熟期、衰退期の4つの段階を経るとしています。これらの4つの段階が製品・技術が持っているライフサイクルを構成し、市場のダイナミックスを理解するために記述的な概念上の枠組みと、製品・技術が有するライフサイクル通じて収益を最大にするために、このライフサイクル の各段階において、特定の製品・技術開発戦略を構築するために必要不可欠な分析となります。
明確な概念上のモデルとしてのPLCを最初に正式に扱ったのは、1950年に Harvard Business Review に掲載されたJoel Deal の“Pricing Policies for New Products”という研究でした。Deanは、特にPLCを通じて、常に変動する販促活動および価格の弾力性そして製造および流通コストは、戦略的な価格調整をしなければならないと述べています。当て推量に基づいて製品の価格を決定するあいまいな価格調整をする習慣とは反対に、PLC の概念は変化する市場のダイナミックスに従い、製品の価格を決定する理論的根拠を提供したものと言えます。その後、Deanの先駆的な研究に基づいて“The full complement of marketing mix variables” がPLC理論に組み入れられるようになりました。図1はPLCのロジスティック曲線になります。
古典的なPLCの根底にある理論的な根拠は、Everett Rogers (1962) によって開発された拡散(diffusion)理論です。拡散理論では、新製品市場で拡散する割合に影響を与える要因は4つあると考えられています。
PLC 理論のかなりの部分は、マーケティング・ミックスにおいて変数を戦術的および戦略的に操作することにより、導入期および成長期段階の間は拡散(あるいは拡大)する割合に影響を与えるために費やされています。
PLCの各段階は、企業経営に影響を与える明確かつ正確な分析がなされていれば、製品およびマーケティング戦略を構築する際には、効果的な考え方として知られています。製品のライフサイクルの間、顧客の態度やニーズ、競争相手の数、市場の力は変化し続けるので、各段階にそれぞれに違う戦略が一般的には必要とされています。
導入期とは、新製品を開発したり新たな製品・技術を市場に導入する時期と言えます。この時期は、通常売り上げは伸びません。導入期の段階では、製品は長い期間をかけて開発されたり、効率的に導入するために膨大な資金が費やされていることがあります。製品が初めて市場に導入されたとき、顧客はその存在を知らないため、また製品の性質、そしてリスクと利点を十分に知られていないために、初期の顧客から大きな抵抗を受けることになります。その結果、市場でその製品は僅かしか売れません。
開発に成功した企業が大々的に製品とその利点を宣伝することにより、製品は消費者に認知されるようになります。消費者が製品を受け入れるようになると、売り上げ数量は急増します。急成長が成長段階の顕著な特徴です。この段階にある時、企業は市場で有利な立場を築くために競争優位を得ようとして、製品およびブランドの差別化を開始する時期でもあります。需要が供給を上回ることによって、小売の需要が保証する以上に卸売り、および製造レベルの主要な指標がさらに成長をするよう刺激します。この時期では、売り上げと利益が上昇し、競争相手は魅力を感じ、改良あるいは模倣された製品が市場に出回るようになります。競争が激しくなることにより、一部の企業は価格で競争しようと考えるようになります。これは成熟段階の始まりを示す兆候として捉えることができます。
多くの競争相手が成長段階での利益に引き付けられるようになります。これに続き、潜在的な顧客の大多数は製品を購入してしまっているため、市場はすぐ飽和状態となり、売り上げが停滞するようになります。顧客の買替需要が以降の売り上げを促進する主要な要因となります。成長段階の終わりの兆候は、図で示したPLCのグラフの屈折の地点で、この地点から成熟段階が始まります。成熟段階が展開されるようになると、価格競争は激しくなり、製品属性間の違いがかつてないほど細かくなり、つまり製品のセグメント化が始まり製品市場内のニッチセグメントへの宣伝が急速に進むこととなります。
第四段階で業界の構造は急変します。顧客は新しい製品・技術より革新的な製品・技術を購入しだすため、成熟段階の頭打ちの状態の時から売り上げは急激に減少するようになります。過剰生産により業界は急反落します。激しい価格競争、合併と買収および倒産によって集中が促進されることにもなります。その結果、売り上げは更に減少することになります。生き残った数社が、製品を市場から撤退させることを検討する場合もあります。あるいは売り上げがより低いレベルで安定したり、若干回復する場合もあります。これは一部の研究者が硬直段階と呼ぶ第五段階として知られています (Michael、1971)。
さまざまな段階で判断を下すことが要求されているプロダクトマネージャは、PLC曲線に関する理論的な説明の他に、さまざまな戦略を検討する必要に迫られます。つまり、理論は説明としての枠組みから、予測を行い何らかの規準を立てるための戦略的な管理システムを確立しておくと良い場合があります。PLCの各段階に、いくつかの一般化された戦略の概念を表1に示しておきます。
戦略 | 導入 | 成長 | 成熟 | 衰退 |
価格設定 | ・2つ選択肢がある (1)製品の導入にかかるコストを相殺するために高くする。 (2)採用者を促すために低くする。 | ・2つ選択肢がある (1)高くする−上澄みをすくう。 (2)低くする−浸透させる。 | ・市場が耐えられる価格。 ・価格戦争を避けることができる程度に、あるいは自社ブランドを持つ競合が参入できない程度に低くする。 | ・売れ残り在庫のリスクを避けるために低くする。 |
得意先に対する販促活動 | ・積極的に行う。 ・大幅に割引。 | 販促活動がより激しくなく。 | 棚スペースを確保するために大々的に販促活動を展開する。 | 販促活動が下火となり、利益の上がらない流通チャネルを閉鎖する。 |
顧客に対する販促活動 | ・サンプル、クーポンなどを使用し初期の採用者に焦点を当て、販促活動を積極的に行う。 | ・リソースは宣伝に移されたため低から中程度の激しさで販促活動をする。 | ・代替製品からのブランド切り替えを促すために高く設定する。 | なし。 |
宣伝 | ・製品属性および初期の採用者に焦点を当てる。 | ・大量市場およびブランド属性に中程度の激しさの焦点を当てる。 | ・代替製品でのブランドの差別化をはかるため中程度に激しく販促活動をする。 | ・在庫を移動するのに最低限の販促活動をする。 |
製造 | ・ジョブ処理 | ・バッチ処理 | ・組み立てライン | ・連続したフロー |
導入 | 成長 | 成熟 | 衰退 | |
競争相手の集中度 | ・高、少数の先駆者が独占する。 | ・競争相手が参入するにつれ下降する。 | ・業界がますます落ち込む。 | ・高、少数の参加者。 |
製品 | ・1 つだけ。 | ・バラエティに富む、ブランドの構築。 | ・ブランド間の競争。 | ・撤退。 |
製品の差別化 | ・ある場合は1 つ。 | ・模倣およびバリエーションの増加。 | ・高い。市場の増加 | ・競争相手が撤退するにつれ減少。 |
参入への障壁 | ・製品を守れる場合は高い。 | ・減る。Growth technology transfer | ・資本集約度が増すにつれ増える。 | ・高い資本集約度、低いリターン。 |
撤退への障壁 | ・低い。少ない投資。 | ・低いが増加している。 | ・大手企業にとっては高い。 | ・低くなる。最終段階。 |
価格 | ・澄みをすくうまたは浸透。 | ・競争相手と同じくらいになる。 ・価格引下げ。 | ・競争相手と同じくらいになる。 ・価格引下げ | ・競争相手と同じくらいになる。 ・価格引下げ |
需要の価格弾力性 | ・弾力性がない、少数の顧客。 | ・ますます弾力性が増すようになる。 | ・セグメントにおいてのみ弾力性がない。 | ・非常に弾力性がある。 ・買い手の交渉力が強い。 |
固定から変動費の割合 | ・一般的に低い | ・増えていく。 | ・高い | ・減っていく。 |
規模の経済 | 少数。重要でない | 資本集約度の増加 | 高い | 高い |
経験曲線効果 | 初期の利益が大きい | 非常に高い。製造量が多い | 重要性の減少 | 少数 |
競争相手の垂直統合 | 少ない | 増えている | 多い | 多い |
ビジネスに内在するリスク | 少ない | 増えていってる | 増えていってる | 撤退障壁の減少 |
PLC理論では、積極的に宣伝をする戦略を導入段階で推奨しています。製品の存在を知らせ、それを使用することの利点を消費者に教育し、市場を確立する大規模な投資が求められます。マーケティングの主な趣旨は、既存の製品の現状と比較した製品の利点を潜在的な初期の採用者に知らせることです。PLC理論では、通常、初期の採用者が使用する販路を確保する選択的販路戦略をとるよう促します。製品への投資と開発に費やした資金を回収するため、小売価格は通常かなり高く設定されています。市場の需要によって調整されるまで大量の固定費の投資を先延ばしするために、法則化された製造戦略が採用されます。
このPLCの段階で取ることができる戦略は、次のとおりです。
成長段階では、製品を購入する顧客が増えるため、初期の採用者から市場全体へと重きを置くところが移ってゆきます。マーケティング戦略では、企業の独占的なブランド属性に集中するようになります。大々的に宣伝をしなくても売り上げの伸びが生産能力の限界に挑むようになるので、一般的に宣伝は中程度に行われます。また増加する需要を支えるため、企業は製造戦略をバッチ処理に転換することを検討する場合があります。需要が増えるにつれ、製品を扱ってもらうのにほとんどの販売チャネルを納得させる必要がなくなります。
成長段階で行うもっとも重要な戦略的判断は、価格戦略です。基本的に企業は上澄みをすくうような価格戦略をとることができます。上澄みをすくう戦略では、先発者の優位性と関係する経済的な地位を得るためには、最初は高い価格を設定します。PLC 理論の先駆者が、このような価格戦略の理論的根拠を次に示す5つの項目で簡潔に捕らえています (Dean、1950、1976)。
また、企業は浸透価格政策を導入する選択をするかもしれません。このような価格政策を追求する理論的根拠は、PLCが進行するにしたがって長期的に大きな市場シェアを確保するために競争相手よりも安く売るためです。同時に経験曲線効果によって生産高が増えるので、企業は徐々に競争力のあるコスト構造を築けるようになります。浸透価格政策は、市場でコスト構造がもっとも低いということが高い収益を保証する成熟段階まで利益を基本的に遅らせます。浸透戦略は、成長段階でシェアを構築する際に被る損失は成熟段階での利益で相殺されるものと仮定しています。浸透価格戦略の理論的根拠の一部は、次の通りです (Dean、1950、1976)。
つまり、初期の革新的な製品・技術が受け入れられると、普通の消費者は彼らのリードに追随します。大規模な製造および利益の機会に魅了された新しい競争相手がこれで参入する可能性がでてきます。市場が拡大するにつれ、製品あるいは技術の新しい機能が出現してきます。価格は安定し続けるか、僅かに下がります。経費が増加した分は、生産高すべてに配分されるにつれ、利益幅はピークに達します。
戦略には、質の向上と新しい機能またはモデルの追加、新しい市場セグメント、新しい販売チャネル、マーケティング戦略を増加した需要に移動することで、価格に敏感な買い手を魅了するための価格の引き下げが有効です。
この段階では、一般化されたPLC戦略は拡大ではなく市場シェアを保持することに戻ります。価格戦略は、市場が進んで払う気持ちのある金額と合う価格設定をすることに限定されます。この段階で重要なのは、だれも勝つことがない価格戦争を起こさないことです。価格戦争は、事実上製造者の黒字を消費者の余剰金に転化することとなり、関係する企業にはなんら利益をもたらしません。また、企業は、自社ブランドを持った競争相手が単に価格を下げるだけでは市場参入するのが遅れるように、差別化戦略を追求するといった成熟段階が始まったことを敏感に感じていなければなりません。第三段階の究極の価格戦略は、製品市場のために広範囲な戦略を選択できるかどうかにかかっています。成熟段階では、低価格を基準とするか、あるいは差別化戦略を追及するかが主な戦略の選択肢です。
販促活動戦略では、販路を拡大しようとするよりも大切な棚スペースを確保するため、確立された小売店に大きく割引をする販売チャネルに焦点をあてています。宣伝費は中程度で、ブランドにより差別化を支えるよう構築されています。この段階でもっとも激しい競争は、ライバル企業の顧客がブランドを切り替えることを促す販促戦略です。コストを低く抑えその結果の利益を得るには、経験曲線効果を最大限に出すために組み立てラインを更に工夫した製造戦略が採用されることになります。
今日、多くの企業は段階が3つある成熟市場の下で経営されていると言えます。この 3 つとは成長成熟 (流通の飽和のため売り上げが下がり始める)、安定成熟 (市場が飽和状態になるにつれ、売り上げは水平)、衰退成熟 (顧客が新しい製品やサービスに移行するため売り上げが下がる) です。
既に述べたように、この段階の主な特徴は、競争の激化による設備過剰となることです。成長期では、次の 3 つの戦略が考えられます。
PLC理論では、衰退段階で製品を管理するのに2つ戦略の選択肢が提供されています。1つは急速に下降する市場で財務損失を食い止めるため、思い切って市場から撤退することです。2番目は、宣伝にできるだけ投資をせず、できるだけ多くキャッシュフローを引き出すことです。これには、売れ残り在庫をなくす低価格戦略も含みます。利益を挙げることができない販売チャネルは閉じます。宣伝、顧客のインセンティブを上げるプログラム、業者間割引は段階的にやめるべきです。企業の中には、撤退を考えているライバル企業を買収し生産高を増やすことを選択するところもあります。このシナリオでの一般的な製造戦略は、最小限のコスト構造を実現するために連続した無駄のないプロセスに切り替えることです。製品の売り上げは徐々に減り、やがて市場から取り除かれることとなります。
この段階で主に問題となるのは、多く見受けられる例として下降している製品を管理する体系的なポリシーがないことです。多くの場合、マネジメントは新しいまたは成熟している製品に注意を移してしまっています。下降段階では、主に弱い製品を識別したり、まだ利用できるマーケティング戦略や機会はあるか判断したり、製品をあきらめることにするか判断するなどのアクションを検討する必要があります。
多くの苦悩や心残りを生むのは、最後に出現する衰退期での活動です。製品が下降しているということを早計に受け入れたマネージャは、古い確立されたブランドの影響で新製品により集中してしまうために、ここでは的確な論理と分析が重要な役割を果たします。このこう着状態では、少なくとも2つの危険をはらんでいます。まず、新製品の導入は非常に資源集中型であることです。2番目に、確立されたブランドを早計に省みなくなってしまうことは、以前より行ってきたブランドを確立するためのキャンペーンによる大量の投資と価値ある消費者の好意を実質的に孤立させてしまう結果を生み出します。
成功してそれなりの利益をあげている企業の多くは、成長の低い成熟した企業で競争しています。PLC理論に基づく戦略には、低成長市場で競争することに関して、明確な偏りがあります。多くの企業が成熟期にある製品・技術市場で成功し続けていることは、重要な警告を出していると共に成功へと導く役割を果たしています。イノベーションの源泉は、決して全てに新しさを開発の芽としているわけではありません。自社の製品・技術がPLCのどの段階にあるか、そしてライバル企業の開発あるいは戦略がどのレベルまで来ているかを見極めることこそが、イノベーションの源泉であると考えます。
ここでは、どの様な情報に基づき自社あるいはライバル企業の製品・技術がどの段階にあるかを評価するための考え方を紹介します。
PLC理論を適用するときの最初のステップは、市場の需要を理解することです。顧客セグメントを識別したり、総需要を評価したり、嗜好を理解したり、満たされていないニーズを識別したり、潜在的あるいは現在ある代替製品の強さを測定するために、市場調査を行う必要があります。市場調査の全ての標準的な教義は、成功するための市場が存在するかどうか、またどこにあるかを知るために必要な情報を収集し分析する必要があります。
競争力のある統一的な小売価格を見積もるのには、次の2つの方法があります。
顧客価値分析を利用し、製品のライフスパンを通じて製品が与える全てのコストと利益を含む製品の総所有価値を判断します。この顧客価値分析は、競合の製品に対しても繰り返します。次に、この分析結果を利用することで、さまざまな価格の潜在的あるいは既に存在する製品に対する新製品の相対的な競争力を比較することができます。
製品と直接競争する代替製品がない場合や市場で既に活動を行っている企業の確立された市場のごくわずかな部分しか侵害しない場合、価格下落の可能性は低いことになります。しかし、新製品が市場で既に活動を行っている企業の市場シェアの大部分を奪う可能性が高いときは、価格が下落する可能性があり、製品が将来も利益を生み続けるように、価格およびコスト決定の判断に組み入れられなければなりません。
対象とする市場セグメントの選択に関し、分析のこの時点で基本的な決定をしなければなりません。前の4つのステップから分析を組み合わせることで、上澄みをすくう戦略か市場に浸透する戦略を選択しなければなりません。既に説明した規範的なPLC戦略を使用し、各戦略と関係するトレードオフを加重する必要があります。一般的な分析では、特定の市場の特異・特質を全て捉えることはできませんが、PLC曲線で上澄みをすくうことまたは浸透戦略を採用するための一般化されたガイドラインを次に紹介しておきます。
上澄みをすくう戦略のガイドライン
浸透戦略のガイドライン
選んだこれらの基本的なマーケティング戦略を基に成長段階における価格戦略を決定することができます。
製品クラス、外観、ブランド間の集合体レベルを調べることは、PLC分析にとって重要な要素となります。分析者は各レベルの集合体から独特の識見を得られますが、一般的には実際の適用基準が理論的な懸念よりは優先されます。PLCの研究は、最高の集合体レベルとして製品の外観を好むという傾向があることが分かっています。製品クラスは異なる製品市場を多数含んでいるので、一般的には顕著な傾向が認められません。また、製品クラスは長期にわたっての傾向しかありません。逆に、製品ブランドの周りを集約するのには、その変化し易い環境をモデル化して捉えることが難しいので、顕著な傾向はないと言えます。分析者がこの問題を乗り越えるための助けとなる製品の定義としては、「製品とは、特定の技術を応用して、顧客セグメントの特定のニーズまたは欲求を満たすものである」と考えることができます。最後の分析では、製品定義の最終的な選択は、分析者の判断に大部分は依存します。
この段階では、PLC分析と従来のマーケティング戦略の違いは明白になってきます。PLC理論では、各サイクルの段階でとるべき戦略は大きく違います。したがってPLC分析が提供する規範的な戦略を実施できるかどうかは、製品がひとつの段階から別の段階に移る転換点をきちんと識別できるかどうかにかかっています。ビジネスおよび経済を予測するテクニックは多数ありますが、これらのテクニックはすべて過去のデータから推定を行います。したがって短期の予測のために、独立した変数の仮定が大きく変わらないときにしか役立ちちません。さらに、経済のビジネスサイクルの転換点を予測するのにもっとも便利です。しかし PLC分析では、これらのテクニックはミクロレベルでは適切ではありません。
要求されているのは、転換点を予測するテクニックで、これは PLC 分析の中でもっとも難しいことのひとつです。次のような、転換点を予測する有用な方法が知られています (Dean、1950、1976; Moyer、1981)。
価格の下落: 小売価格の値引き、割引の横行などいくつかの方法で価格が弱体化していることが示されます。これらは通常非公式に交渉されます。割引の大きさがいつ大幅に変わるか予測するのは、転換点分析の重要なポイントです。
購買抵抗の増加: 市場が弱体化しているということは、営業担当者の増員、高い頻度での顧客への連絡、個々の顧客ニーズへの対応、製品を販売フロアーや棚に置く時間を増やすなど、さらに営業努力をする必要があります。
在庫の増加: 市場の需要が減るとき、通常それよりも前に在庫が過剰に蓄積されています。在庫の蓄積の マクロ経済学的な評価では、経済成長が緩やかになってきていることを示しますが、分析者は製品市場での在庫の蓄積に焦点を当てなければなりません。在庫の増加を見つけるための情報源としては、市場固有の在庫データや政府の在庫データなどがあります。
手持注文の減少: 情報源としては、企業の告知、会計報告、政府統計および産業団体データがあります。ここでもまた、転換点分析を実行するのに現在のデータ(生データ)がもっとも有効です。
内部売上データの分析: 製品売り上げの成長率の変化は、成長段階と成熟段階の間の PLCの変曲点を示す場合があります。分析からゆがめる一時的な異常な変形点を取り除くために移動平均を使用することを推奨します。
メディア分析: 製品に関する報道機関や社説からの否定的なコメントによって、転換点はしばしば分かります。
バブル・シンドローム(bubble syndrome): 皮肉にも転換点は市場参加者が異口同音に底が知れている(sky is the limit)と主張するときに起こります。このような押さえの利かない楽観主義はしばしば市場が飽和状態に近いことを示しています。
変化したブランドの選択(Declining Brand Preferences): 弱体化する市場ではしばしばその前に需要の交差弾力性がエスカレートしています。
製品の標準化の増大: 属性の差異が減るということは、成熟期への転換点を示している場合があります。
自社ブランドの市場への参入
市場の飽和: 市場の需要が満たされているということは、初期売り上げに対する買い替えの売り上の率が高いことによってしばしば示されます。
共通の製造工程: 市場の成熟の兆候のひとつとして、特定の製造工程を画一的に採用することを挙げることができます。これは、業界全体が経験曲線効果から利益を受けることにますます焦点を当てていることを示しています。
PLCの各段階の規範的な戦略が、各段階で実施されます。各PLC段階でマーケットミックスの変数を管理するための手引きは、規範的な PLC戦略について説明している部分でされており、既に示した表1 と 表2 で要約されています。
革新的な技術の導入や他の混乱を起こすような競争相手のパラメータは、新しい PLCの展開を促進することがあります。この場合、個々の分析の変数を動かす変更された想定を組み入れた新しいPLC分析を実行する必要があります。
イノベーションの源泉とは、私の理解では自社の製品・技術がどのような市場で生きているかを見極めることが先決ではないかと思っています。次の、多くの製品・技術が成熟期にあることを認識すべきであり、この段階の開発戦略の基本はライバル企業の開発動向を含めた企業行動に関する多くの情報を収集・分析・評価、つまりインテリジェンス活動を通じて得られるものではないかと考えています。
他に、マーケティングの神様と言われるマイケル・ポーターは、PLC段階で発生するウイーク(微弱)なシグナルを捉える事が極めて重要な戦略を構築するための基本であることを示唆しています。マイケル・ポ−ターが指摘しているウイークなシグナルについては機会を改めてご紹介できればと思います。
特に、成熟期にある製品・技術であれば、ライバル企業あるいは新たな参入を考えている企業の動向は、ウイークなシグナルを見極めることが重要であると考えますが、読者の皆さんはどのように思われますか。
参考文献