連載 著作権と情報システム 第18回
司法書士/駒澤大学 田沼 浩
1.著作物
[3] 文化庁案「著作権審議会第六小委員会(コンピュータ・ソフトウェア関係)
中間報告」(10)
IV 保護の内容
二 著作権
(2)翻案権
著作権法第27条において、「著作者は、その著作物を翻訳し、編曲し、若しくは変形し、又は脚色し、映画化し、その他翻案する権利を専有する」と規定されている。翻案権とは、同法同条により「二次的著作物を創作する権利」として認められているものである。また、同法第28条により、「二次的著作物の原著作物の著作者は、当該二次的著作物の利用に関し、この款に規定する権利(複製権等の著作物の支分権)で当該二次的著作物の著作者が有するものと同一の種類の権利を専有する」としている。たとえば原作となる小説をゲームソフトとしてプログラムに翻案した場合、原著作者である小説の著作者にもゲームソフトの頒布権を認めるというものである。
そして、プログラムはそのアルゴリズムを保護の対象とはされていないことから、リバースエンジニアリングと呼ばれるプログラムの技術解析は、著作権を侵害することにはならない。著作権審議会第六小委員会では、プログラムの翻案について、小説などの他の著作物に比べて、権利(著作権)の及ぶ範囲は狭いものとして考えられるべきと報告している。たとえば、あるプログラムに基づいて創作性のある改変を加える行為は翻案であるが、別のプログラムを追加したような場合は、別々の権利を有するもの(著作物)と考えられる。また、あるプログラムを解析して導き出されたアルゴリズムから、新しいフローチャートを作成し、そこからプログラムを作成することは翻案に該当しない。
中間報告では、プログラムについての翻案権の及ぶ範囲を具体的にすべきという意見があったが、特許法の利用発明の利用概念のように明確にすることは困難という意見を述べるにとどまっている。
・著作権法概説第13版、半田正夫著、法学書院、2007年
・著作権法、中山信弘著、有斐閣、2007年
・ソフトウェアの法的保護(新版)、中山信弘著、有斐閣、1992年
・岩波講座 現代の法10 情報と法、岩村正彦、碓井光明、江崎崇、落合誠一、鎌田薫、来生新、小早川光郎、菅野和夫、高橋和之、田中成明、中山信弘、西野典之、最上敏樹編、岩波書店、1997年