情報システム学会 メールマガジン 2010.8.25 No.05-05 [10]

連載 著作権と情報システム 第17回

司法書士/駒澤大学 田沼 浩

1.著作物

[3] 文化庁案「著作権審議会第六小委員会(コンピュータ・ソフトウェア関係)
       中間報告」(9)

IV 保護の内容

二 著作権
(1)複製権
ウ プログラムの実行(使用することへの権利を認めること)の取り扱いをどのようにするのか。(2)
 プログラムの実行する場合、内部記憶装置(たとえば処理をするために、メモリに記憶されることなど)への蓄積をどのように考えるかという問題がある。要するに、このような内部記憶装置への蓄積を複製権の侵害と考えるかということである。著作権審議会第二小委員会の昭和48年6月の報告書では、「その蓄積は瞬間的かつ過渡的なものであって、複製に該当しない」という見解が述べられているが、中間報告ではこのような内部記憶装置への瞬間的かつ過渡的なものであっても、複製と解するという意見が示されている。
 それでは、プログラムの実行について何らかの権利(プログラムを実行する権利)が必要かどうかを考えるとき、内部記憶装置への蓄積が複製であるという規定を設けることや、プログラムが演算装置に送られて、再製されることを無形の複製権として認めてもよいか。
 著作権審議会第六小委員会では、別にプログラムを実行する権利を認めなくても、もしプログラムの著作物の著作権を侵害する行為によって作成された複製物(違法に複製されたプログラム)を業務上電子計算機において使用(実行)すれば、その使用した者が情を知って著作権を侵害した者とみなすという規定を新設すれば足りると結論づけている。
 よって、パッケージソフトウェアだけでなく、内部記憶装置へ蓄積したプログラムについても、「プログラムを実行する権利」を認める必要はない。もし著作権を侵害する行為によって作成されたプログラムの複製物が使用されても、「これらの複製物を使用する権原を取得した時に情を知っていた場合に限り、著作権を侵害する行為とみなす(著作権法第113条第2項)」という規定※によって、使用した者に対して著作権侵害として差止請求等ができるようになるのである。
※具体的に表現するなら、著作権法を侵害して作成されたプログラムであることを知って、ライセンス契約を結ぶことなどは、著作権を侵害する行為とみなされるということ。

引用・参照文献
著作権法概説第13版、半田正夫著、法学書院、2007年
著作権法、中山信弘著、有斐閣、2007年
ソフトウェアの法的保護(新版)、中山信弘著、有斐閣、1992年
岩波講座 現代の法10 情報と法、岩村正彦、碓井光明、江崎崇、落合誠一、鎌田薫、来生新、小早川光郎、菅野和夫、高橋和之、田中成明、中山信弘、西野典之、最上敏樹編、岩波書店、1997年