IV 保護の内容
二 著作権
(1)複製権
ウ “プログラムの実行(使用することへの権利を認めること)”をどのような取り扱いにするのか。(1)
中間報告では、“プログラムを使用する権利(プログラムを実行する権利)”を認めることで、不正なプログラムの実行やアクセスに対応できるとする意見も述べられている。
ただし、このようなプログラムを実行する権利に対して、次のような消極的な意見が大勢を占めた。
(1)プログラムを実行する権利が認められると、パッケージソフトウェアを購入した者などが、購入したプログラムを実行する権利について、プログラムを実行する権利の許諾が得られなければ、結果としてプログラムが実行できなくなるおそれがあるという意見(当時大量に出回っていた売り切りパッケージソフトウェアにおいて、プログラムを実行する権利を認めることは、流通利用面からの阻害要因となるという理由)
(2)プログラムを実行する権利については、排他的権利としてライセンス契約の中で処理されているので、新たに設定する必要性がないという意見
(3)違法に複製されたプログラムの実行などの限られた事例を前提に排他的権利であるプログラムを実行する権利を一般に認めることは妥当ではない、また複製権や貸与権だけで十分利益を確保できることからそれほど実益は少ないという意見
(4)わざわざプログラムを実行する権利を認めなくても、著作権法第113条第1項第2号により著作権を侵害する行為によって作成された物(複製権を侵害した複製物)に対して、情を知って頒布する行為を著作権を侵害する行為とみなしていることから、これと同様に、著作権の複製権を侵害した(違法に複製した)プログラムに対して、情を知って実行する行為は、著作権を侵害する行為とみなす規定を設ければ足りるという意見
(5)著作権の支分権として、新たにプログラムを実行する権利を認めることは、表現の保護という著作権法の建前から逸脱しているという意見
結論として、中間報告では、「プログラムの実行について新たに権利を認めることは、理論的にも実務的にも問題が多く慎重でなければならない」として、プログラムの実行について新たに権利を認めないことが示された。
引用・参照文献
著作権法概説第13版、半田正夫著、法学書院、2007年
著作権法、中山信弘著、有斐閣、2007年
ソフトウェアの法的保護(新版)、中山信弘著、有斐閣、1992年
岩波講座 現代の法10 情報と法、岩村正彦、碓井光明、江崎崇、落合誠一、鎌田薫、来生新、小早川光郎、菅野和夫、高橋和之、田中成明、中山信弘、西野典之、最上敏樹編、岩波書店、1997年