情報システム学会 メールマガジン 2010.5.25 No.05-02 [10]

連載 著作権と情報システム 第15回

司法書士/駒澤大学 田沼 浩

1.著作物

[3] 文化庁案「著作権審議会第六小委員会(コンピュータ・ソフトウェア関係)
       中間報告」(7)

IV 保護の内容

二 著作権
 著作権法における財産的権利、特にプログラムと関係の深い複製権と翻案権を中心に検討されている。
(1)複製権
 著作権法の複製権は有形的な再製を前提としていることから、再製されたもの(固定されたものでなくてもよい)が実質的に同一であればよく、同一性が保たれていれば同じ表現形式でなくてもよい。
 中間報告ではプログラム著作物の複製権について、次の事項について検討されている。
ア ソフトウェアの一部分の複製にも権利が及ぶか。
 著作物の一部分(たとえば部分的機能を集めたシステムを構成するモジュールのようなまとまりのある部分)の複製でも、著作物としての有用性(創作的表現)があれば、複製権として権利が及ぶ。ただし、個々のステートメント(プログラム言語で記載されたそれぞれの文)の複製やある程度まとまったステートメントでも慣用的に用いられているような一部分の複製は、複製権としての権利は及ばない。
イ プログラム言語の変更について、どの程度なら複製物となるか。
 著作権審議会第二小委員会の昭和48年6月の報告書から引用されているとおり、「プログラムのプログラミング言語を変更して作成したプログラムは、原プログラムの複製物であるにすぎない。(同報告書13頁)」(たとえばオブジェクト・プログラムはソース・プログラムの複製物にすぎない。)と考えられているが、中間報告ではあるプログラム言語から他のプログラム言語に変更するときに、すべてが複製に当たるということはないとしている。たとえば、フローチャートからアルゴリズム(解法)を摘出して新たにプログラムを作成するような場合は、別のプログラムを作成することになるため、新しい著作物と考えられる。要するに、コンパイラやアセンブラなどの変換プログラムを使って機械的に言語を変更する場合ではなく、新たな創作性を有するようなプログラム言語の変更過程を経た場合は、新しいプログラムとなるため、原プログラムの複製物とはならないということである。

引用・参照文献

・著作権法概説第13版、半田正夫著、法学書院、2007年
・著作権法、中山信弘著、有斐閣、2007年
・ソフトウェアの法的保護(新版)、中山信弘著、有斐閣、1992年
・岩波講座 現代の法10 情報と法、岩村正彦、碓井光明、江崎崇、落合誠一、鎌田薫、来生新、小早川光郎、菅野和夫、高橋和之、田中成明、中山信弘、西野典之、最上敏樹編、岩波書店、1997年
・標準パソコン用語辞典(2009〜2010年度版) 赤堀侃司監修 周和システム第一出版編集部 2009年