理事が語る
「ITサービス企業における社内コミュニケーション」
日本アイ・ビー・エム・サービス株式会社 代表取締役社長 伊藤 重光
2008年4月に日本アイ・ビー・エム・サービス(株)の社長に就任してから、継続して力を入れているテーマのひとつが社内のコミュニケーションです。ITサービス企業において社内コミュニケーションは社員の仕事の質を高め、社員の成長のためにも大変重要なテーマであると考えています。全国約40ケ所の事業所・拠点と数多くのお客様サイト、プロジェクト・サイトで働く社員を対象にして、いろいろな仕組でコミュニケーション推進をしていますので、ご紹介したいと思います。
1. 会社から社員への伝達と意見
社長メッセージ、会社の方針・ビジネス戦略、組織の役割、人事制度、社内プロセス、重要ニュース等の知っておいてほしい情報を“ISC-J Portal”という名前のイントラネット・サイトよりタイムリーに情報発信しています。社長メッセージは週1回程度のペースで発信しており、それに対して社員から意見も返信できるような仕組としています。社長メッセージの内容は会社方針や重要情報等、社員に知っておいてほしいこと、理解してほしいこと、私自身の個人的な考え等で、連載物としてはスポーツ界や町で出会ったプロフェッショナルを紹介し、プロフェッショナルとしてのポイントを解説するプロフェッショナル・シリーズを掲載しています。今回は社内コミュニケーション全般をテーマに取上げましたが、また別の機会に社長メッセージの内容について紹介させていただければと思っています。
2. 社員から会社への意見と回答
自由に意見の言える会社を目指しているので、基本的には意見を言いたい相手と直接会話やメールで伝えることを奨励していますが、中には発言しにくい内容もあるのではないかということで、記名だけでなく匿名で意見や要望を伝えることができる“目安箱”という仕組がイントラネット・サイトに作られています。年間約40件程度の意見・要望があり、会社として全てに回答し、個人的な内容の場合を除き回答を掲載しています。また人事制度に関しては質問や意見・要望を出せる仕組も作られています。
3. 経営陣と社員のコミュニケーション
不特定多数の社員を対象としたものとして“Town Meeting”という仕組があります。各事業所で事前に開催案内をし、前半は経営陣による会社の最近の動きに関する説明、後半は社員からの質疑応答となっています。もう少し少人数のコミュニケーションの仕組として“Round Table”という仕組があります。事前に開催場所とテーマを案内しておき、10-15名程度の社員が自主参加をして経営陣を交えてディスカッションを実施するもので、社員から意見や要望を聞く機会でもあります。“Town Meeting”と“Round Table”は事業所内のオフィスで開催していますが、なかなかプロジェクト・サイトを離れられない社員のために出張型の“プロジェクト訪問”というプログラムも実施しています。
4. 所属長と社員のコミュニケーション
社員と所属長のコミュニケーションは“Face to Face”を基本としていますが、最近IBMグループでは会社や組織を越えてダイナミックにプロジェクト・チームが編成できるようになったため、所属長は部下の社員が仕事をしている場所を訪問して会話をするケースが増えてきました。年間の業務目標設定や個人別の育成計画、中間での目標修正、そして年末の実績評価と最低年3回のインタビューが実施されますが、部下の仕事の状況をタイムリーに把握し、適切なアドバイスをするにはメリハリのあるコミュニケーションが必要となってきています。
5. 社員同士のコミュニケーション
勤務地域や仕事内容が違う社員同士のコミュニケーションの仕組も大切です。仕事に密接したコミュニケーションの場としては、“Knowledge Ring”というデータベースを介してのコミュニケーションが行なわれています。同じ分野を担当している社員同士が組織や地域を越えてお互いに技術交流し、助け合う仕組です。他にも仕事上の知的資産の共有の仕組である“Knowledge Brain”や社員の貴重な仕事上の経験を発表する“事例報告会”の仕組もあります。またもう少し気軽な交流の場として“Communication Café(編集部注:?に見えるときは、e にアクサンテギュ)”というデータベースの仕組があります。この仕組はBBQ大会の案内や同好会の案内等、仕事以外の気軽な交流が社員のチームワーク意識向上には必要との社員の提言で出来たものです。最近ではさらに“わくわく勉強会”という社員による自発的な勉強会の場としてのデータベースも活用されています。例えば「DGに役立つ中国語」や「ランチde英会話」、「わくわく生産管理」といったテーマで地域や組織を越えた勉強会が自主的に開催されています。
6. 各種会議体
日本全国から会議に参加することがあるので、ほとんどの会議は“Web Conference”と“Tele Conference”という仕組を利用して開催されます。これはIBMグループの中では会社を越え、国を越えて行なわれている仕組です。電話による音声とWebを利用したプレゼンテーション資料の共有により会議が行なわれます。さらに“e-Meeting”という仕組を利用すれば、さらに発表者の画像もリアルタイムに配信できますし、その画像は後で“Web Cast”としてオンデマンドで自由な時間に自分のPCで見ることもできるのです。この“e-Meeting”の仕組を活用し全国30ケ所を結んで四半期に一回、全社会議が開催されています。
以上、あるITサービス企業の社内コミュニケーションの仕組のいくつかをご紹介しましたが、社員がどこで働いていても、自分の存在価値を認識し、仲間の存在を認識し、そして会社や組織の中で、いろいろな仕組に支えられて仕事をすることで、組織の一体感を感じてほしいと考えています。そのような環境が整ってこそ、仕事の品質が向上し、最終的にはお客様の成功に貢献できると思っています。ITサービス企業で働く社員の中には個人のスキルだけが大切と思っている方も多いのではないかと思いますが、チームとしての仕事、組織力を活かした仕事により、個人の力の範囲を越えた成果を出すことができるのです。そしてその経験を通じて社員がさらに成長し、魅力的な人間になれると考え社内コミュニケーションに注力しています。