-プログラム権法の骨子(案)つづき-
(7)ユーザー保護
プログラム開発をするメーカーや販売するベンダーの保護だけではなく、プログラムのユーザーの保護を目的とした規定である。
プログラムの流通がやっと活発になり始めた当時としては、プログラムの取引に関する表示内容等指針となるべき事項の公示やその販売するプログラムの内容表示等の義務化は、ユーザー保護として当然のことと考えられる。
だが、プログラムに関する情報がインターネット上で頻繁に公開されている現在の状況では、プログラムのユーザーもプログラムを取引する前にメーカーサイトなどから情報を得ていることから、ユーザー保護のために「通商産業大臣はプログラムの取引に関し、表示内容等指針となるべき事項を公示する」ことが本当に必要だとはならないであろう。
フロッピーディスクも普及しておらず、ユーザーがプログラムのバックアップを簡単に保管できない当時としては、登録機関がソースプログラムを受理する特別寄託制度を検討することは至って自然のことと考える。
だが、バックアップ用の機器やオンラインストレージが普及している現在では、ユーザーのために登録機関がソースプログラムを保管するための特別寄託制度を設ける必要があるかは疑問である。
また、現在では、ユーザーにおいて、別の保護、すなわちセキュリティ面でのユーザーの保護が求められている。あるプログラムの脆弱性が深刻な場合、起動上問題がなくても、そのプログラムを使いながら、簡単にインターネットに接続できなくなることがある。プログラムの脆弱性によって、コンピュータセキュリテイが確保できなければ、ユーザーの利益を守れることはできない。
(8)裁定制度
等について、適正な対価と一定の条件のもとで裁定により当該プログラムの使用・複製等ができる制度を設ける。その際、原権利者の権利が不当に害されないよう措置する。
(1)〜(3)において、特許法第83条、第92条、第93条に類似した例示が列挙されているように、プログラムの権利について適正な対価を払った者に対し、実施許諾を認める裁定制度を設けるものが考えられている。同時に裁定により当該プログラムの使用・複製等ができる制度による原権利者の権利が不当に害されないような措置については、どのような措置かまで明確にされていない。
(9)権利侵害に対する措置
差止請求、信用回復の措置、損害額の推定、刑事罰の規定を設ける。
権利侵害に対する措置について、差止請求、信用回復の措置、損害額の推定、刑事罰以外、本中間答申には明確な記述はない。ただし、現在の著作権法にも、差止請求、信用回復の措置、損害額の推定、刑事罰はあることから、大きな差はないものと考える。
(10)紛争の処理
本中間答申においても、全ての紛争処理を裁判とすることは不適として、あっせん、調停、仲裁、判定制度の制定を考えられていた。
プログラム審査員(仮称)には、プログラムに関する最先端の技術的知識を有する法律の専門家または法律的知識を有する技術者を候補として想定している。
(11)その他
旧通産省(経済産業省)産業構造審議会情報産業部会では、日本独自のプログラム権法(仮称)の提唱を前提としていることから、プログラムについては著作権法の適用がないことを明確にする必要があった。また、法人の従業員等が制作したプログラムの権利帰属をはっきりさせることで、余計な紛争を避けることも明記している。
プログラムの標準化については、現在とは異なり、基礎となるプログラムの互換性の確保の要望が多かったことから、明記された。
引用・参照文献