情報システム学会 メールマガジン 2008.3.25 No.02-12 [2]

「情報システムのあり方を考える」 会の報告

主査 伊藤重隆

 当研究会の2007年度最後となる第12回研究会を2008年3月8日(土)午後1時30分から5時まで開催しました。参加人数は、20名でした。

 第1部は、テーマ「検索エンジンデザイン(エンタープライズ・システム)」で、慶應義塾大学デジタルメディア・コンテンツ統合研究機構 嶋津恵子准教授に講演いただきました。講演の中で、情報社会と言う言葉の起源について、1970年代まで振り返り、また、日本企業のIT投資について最近までのトレンドについて紹介がありました。従来のIT投資トレンドは、事務効率化を中心に進められてきたが、意思決定、営業推進、マーケッティング力強化が最近の傾向として見られる。この傾向は、過去にもあり問題が解決していない、もしくは問題解決の困難さを表しているのではないかとの指摘がありました。また、企業の有力な情報システムである情報の検索エンジンを考える場合、検索機能の優位性ばかりでなく、特に企業として、システム基盤運用コストが最小コストで実現できるか、さらに、検索エンジンがシステム的にオープンであるかが重要であると、実際の検索プロダクト比較結果を反映した紹介がありました。さらに、企業の情報システムとして、検索結果の情報が再現性がある場合は、その機能を基幹システムへ組み込み、再現性のない情報の検索については、検索エンジンで実現するという情報システムのあり方を示す重要な示唆を講演でいただきました。

 第2部は、「金融と情報システム」のテーマで、研究会 主査が講演を行いました。
まず、最近、生じている情報システムの事故と金融の事象を紹介した上で、金融の歴史を、欧米と日本について述べ、金融に必要な情報システムについて事例により江戸時代から現代までを振り返りました。
 日本における金融業界での情報システムの発達について、戦後に制定された業法に基づき業態別に発展してきている。業態別なので、金融業界全体から見れば共通化を図り効率化できるものも、個別業態で開発する場合が多く、IT投資の効率が悪いと考えられる。また、情報システムの開発も、欧米は、定型処理は、コストの安いバッチ処理中心で戦略的な分野をリアルタイムシステムにする等、IT投資の最適化を推進してきているが、日本については、複雑なリアルタイムシステムを中心に情報システムを開発してきているため、IT投資の効率性は、欧米に比較すると低くグローバルな競争力に欠ける。今後の、情報システムについては、IT投資の効率性を良く考えた仕組み作りが必要で、この実現には、情報システムの専門家が必要である。

 以上、講演概要をご報告しましたが、講演後の質疑も活発に行われました。
2008年度も当研究会は、情報システムのあり方を追究する活動を、産業界での情報システム開発現場を忘れずに引き続き活動を行いますので、積極的な参加をお願いします。