情報システム学会 メールマガジン 2011.5.25 No.06-02 [9]

連載 著作権と情報システム 第26回

司法書士/駒澤大学 田沼 浩

1.著作物

[3] 文化庁案「著作権審議会第六小委員会(コンピュータ・ソフトウェア関係)
       中間報告」(18)

V 権利の制限
 三 プログラムの複製、翻案等について権利者の許諾を得られない場合の措置を設けることの必要性について【3】
 プログラムの複製、翻案等を強制許諾させる新たな制度を設ける必要性について、検討されている。
 結論としては、(1)著作権は特許権とは異なり、既存のものと同一又は類似のものであっても独自に開発すれば権利侵害とはならないこと、そのため、もし一般的な強制許諾制度(著作権法第67条、第68条、第69条、第70条)を導入すれば、製作する者がプログラムの権利を保護する意識が減退して開発する意欲を失う危険性があること、(2)公益的見地から、プログラムについて限られた範囲内において強制許諾制度を設けることを考えるべきであることとしている。
 また、プログラムの利用実態から、特許権のような裁定制度を導入すべきであるという意見も示されている。
 ベルヌ条約第9条第2項には、「特別の場合について第1項の著作物の複製を認める権能は、同盟国の立法に留保される。ただし、そのような複製が当該著作物の通常の利用を妨げず、かつ、その著作者の正当な利益を不当に害しないことを条件とする。」としている。よって、複製が当該著作物の通常の利用を妨げず、かつ、その著作者の正当な利益を不当に害しないことを条件にして、「限られた範囲内であれば条約上可能である」としている。
 なお、ベルヌ条約および万国著作権条約には、発展途上国に限って著作権の複製及び翻訳に関する一般的な強制許諾が定められている。そのため、発展途上国の個人や企業を相手にする場合、プログラムの複製についても一般的な強制許諾制度が適用される。

引用・参照文献
著作権法概説第13版、半田正夫著、法学書院、2007年
著作権法、中山信弘著、有斐閣、2007年
ソフトウェアの法的保護(新版)、中山信弘著、有斐閣、1992年
岩波講座 現代の法10 情報と法、岩村正彦、碓井光明、江崎崇、落合誠一、鎌田薫、来生新、小早川光郎、菅野和夫、高橋和之、田中成明、中山信弘、西野典之、最上敏樹編、岩波書店、1997年