通産省(現、経済産業省)の産業構造審議会情報産業部会が、ソフトウェアの保護制度の確立のために満足させるべき要件として掲げられた事項(つづき)
(9)登録・公示制度・・・プログラムの登録・公示
プログラムの登録・公示制度は、その権利侵害を未然に防ぎ、権利を証明することで紛争を迅速に解決するために有効な手段である。プログラムの機能概要等を登録することによって、プログラムの流通・利用の促進を図り、重複投資の防止につながる。また、使用権については、新たに創設する権利であるため、その権利の及ぶ範囲も広いことから、登録を権利発生用件とすることを考えるべきとしている。
(10)ユーザー保護・・・プログラム取引の指針、特別寄託制度
プログラム開発者の保護の視点だけでなく、プログラムを利用するユーザーの利益についても配慮すべきとしている。具体的な方法として、プログラムの内容・機能・使用条件等の表示を行わせるなどの一定義務を課すことが必要としている。
(11)標準化・・・基礎プログラムの一定標準化
プログラム開発において、重複投資を回避してプログラムの利用の効率化を図るため、基礎となるプログラムについて一定の標準化(規格化)を図ることを必要としている。
(12)裁定制度
「プログラムに係る権利保護については、工業所有権的な観点に立って図られるべき」として、「一定の条件を満たすことを前提に」、「適正な対価のもとで、」利用許諾を認められるべきであるとしている。本中間報告では、プログラムに関する権利についても既存の特許法、実用新案法、意匠法や著作権に準じた制度として「裁定制度と同様に(1)既存プログラム又は特許発明等を利用してプログラムを作成する場合、(2)公共の利益のために必要な場合、(3)プログラムの不実施の場合、等において、裁定による使用・複製等の許諾制度を設ける必要がある」としている。
(13)紛争処理
プログラムは製品としての価値を保てる期間が相対的に短く、高度な専門知識を集約したものであるが故に秘密性を保たれることが求められる。紛争が起こった場合、早期の解決を要するものとして、「あっせん、調停、仲裁、判定といった簡易迅速かつ公正な紛争処理手続きを設けることが必要」とされた。
(14)プログラム審査員
プログラムに関する裁判などにおける鑑定人などを確保するため、「プログラムに関する最先端の技術的知識を有する法律の専門家及び法律的知識を有する技術者等」をプログラム審査員として事前に任命しておくことが必要であるとしている。
次に既存法制における保護の問題点として、次の事項を掲げている。
(1)著作権法によるプログラム保護の主要な問題点
(2)特許法によるプログラム保護の主要な問題点
(3)契約法によるプログラム保護の問題点
引用・参照文献