H11年からいくつかの大学で非常勤講師を務め始め、(35年の企業経験を経て)H20年4月から近畿大学に就任したばかりですから、「大学教員」としては"新米"です。したがって大学を代表して書くことはできませんが、「企業生活の長かった人間が大学教育に関わり合い始め"新鮮な眼"で大学教育を個人的に見ることができる」のではないか、ということで書かせていただくことになりました。現在は経済学部で「情報システム論」を中心に講義をしています。
(1)経済学部には「情報関連科目」が多い
近畿大学経済学部の情報関連科目をまとめると表1のようになる。情報科学関連基礎科目は若干少ないものの、情報活用科目は一昔前の情報系学部かと思わせる程である。科目数が増えている背景は、経済学部の学生が「情報」に関心を持っている(情報関連科目を要望している)ことであろう。現に履修者も多い。
(2)講義では驚きがいっぱい
すでに担当されている先生方には当たり前のことになっているのかもしれませんが、この「大学教育最前線」シリーズ第3回で龍谷大学西本先生が述べているとおりです。すなわち「極論してしまえば,学問的な興味よりは,いかに有意義に4年間のキャンパスライフを楽しみ,アルバイトに没頭し,その後,要領よく体裁の良い企業に就職してしまえば良いという安直な考えの学生が圧倒的に多いのです」(情報システム学会 メールマガジン 2007.10.25 No.02-07 )。
新米老年教員の新しい目でみると次のようになる。
上記現況を鑑みて次のような工夫をしている。
(1)「レポート/コメントを繰り返す」
毎回講義の中で話したテーマに関して「自分なりの考えをまとめる」レポートを(15分弱で)書かせる。例えば「DWHを推進する立場になった場合、自分ならどういう工夫をするか」。そして次回の講義でそのレポートの記述内容について筆者から必ずコメントする(教員の負荷は高くなるが、コメントしないと反省効果が現れない)。これを20回ほど繰り返す(4単位科目の場合)。
レポートがあることで講義は聞かざるを得なくなり、当初2、3行しか書けなかった学生も、終盤になると10行以上の自分の意見を書くようになってくる。
(2)「ノートを作らせる」
毎回「ノートテイク」について言及し、「自作ノートのみ持ち込み可」の期末試験(または総合演習)を実施する。
ノートを作ることが"蓄積感"が醸成される(カード利用のポイントが貯まる感覚に似ている)のか、出席率が向上する。単なる記憶学習から"巣離れ"して、書くことにも慣れてくる。
この他の工夫もしているので、上述の工夫が主要因であるか現段階では明言できないが、学生からも「これだけ書かされる講義は苦痛だが面白かった」との評価も多く、年を追うごとに筆者担当「情報関連科目」の履修者も増えている。
学生は「情報」に関心を持っている。教え方を工夫すれば「熱心に聞いて(勉強して)くれる」可能性は高い(まだまだ「工夫を続ける」必要があると思っていますが)。