「情報システムのあり方を考える」会(主査:伊藤重隆)は11月10日,中央大学理工学部の会議室で第10回研究会を開催した。
研究会は2部構成で,第1部は富士通ディフェンスシステムエンジニアリング代表取締役社長の川野喜一氏が「ディフェンスシステムにおける情報システム」と題して,続く第2部は水野薬局代表の水野善郎氏が「調剤業務のIT化とIT業界への意見」と題して,講演を行った。
第1部講師の川野氏は米ソの冷戦終結を背景として脅威が内戦やテロリズム,人口・食料問題,地球環境などへと大きく変化したことから,防衛システムを取り巻く環境と課題も変化したと語った。そして,軍事分野で指揮官を支援する指揮統制システムの発展に触れ,同システムが施設・装置・通信・手順(規約)および組織・人間を含むコマンド&コントロール(指揮統制)の系全体を支援する「情報システム」であると指摘した。
また,情報技術がコンピュータ中心からネットワーク中心へ,コンテンツ(知識)中心へと変化したのに伴い,防衛システムも飛行機や船などのプラットフォーム中心からネットワーク中心へ,さらにナレッジマネジメントをはじめとするコンテンツ中心へと変化していると述べ,多くの情報システムが
有機的に連携して稼動する困難さも指摘があった。
第2部講師の水野氏は,水野薬局の情報化の経緯と現在運用している情報システムを紹介した。同社は,売上高22億円,従業員約50人で,1964年に日本で初めての調剤薬局となった業界の老舗である。
1980年に慶応大学の浦研究室と共同で「APOS」を開発,1993年には「Liberty System」を開発し,サブシステムの疎結合方式で拡張を続けて現在に至っている。現在はRFIDによるトレーサビリティシステムを導入して,薬剤師の生産性向上と正確な業務処理に役立てている。
また,データマインニングによって「A錠がB診療科から出されることは稀です」などといった警告を発する仕組みを導入した。同社は常に最先端技術を積極的に採用してきたが,その一方で,人手を介する工程をわざと入れる
ことで人的ミスを回避する工夫も重ねてきた。水野氏は「すべてコンピュータ化すればいいというものではない」と語り,人間系とコンピュータ系との連携の重要性を強調した。又,IT人材についてリベラル教育が重要との指摘があった。
当日の参加者は30名。各部の講演後には質疑時間が設けられ,活発な議論が展開された。