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         情報システム学会 メールマガジン
                 2007.6.25 No.02-03

[1] 理事が語る (魚田勝臣)
[2] 第26回理事会報告
[3] 研究会だより
  [3-1] 今年度研究会の紹介
  [3-2]「産業界からの論文発表を促進するための研究会」より
  [3-3]「情報システムのあり方を考える」会の報告書について
  [3-4]「グローバル・アライアンス研究会」の活動について
[4] 連載「情報システムの本質に迫る」
   第1回「情報は形がない」か? (芳賀正憲)

<編集委員会からのお願い>
 ISSJメルマガへの会員の皆様からの寄稿をお待ちしています。情報システ
ムの実践,理論などに関するさまざまなご意見をお気軽にお寄せください。
 また,会員組織による人材募集やカンファレンス,セミナー情報,新書の
紹介など,会員の皆様に役立つ情報もお知らせください。
 宛先は−−>メルマガ編集委員会(issj-magazines■issj.net)です。
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[1] 理事が語る 魚田勝臣(ISSJ総務委員長:専修大学)

 5月の総会で理事に再選され総務委員長を拝命しました魚田でございます。
学会設立に携わり理事に選任されてから2期目に入ります。私は,これまで
の個人の活動を中心にした学会運営を,組織としての活動に段階的に移行し
て,学会の基盤を堅固にし更なる発展を遂げる仕組み作りに努力したいと考
えております。どうぞよろしくお願いいたします。

 学会が発足して2年あまりの間に総会,研究発表大会や研究会等の活動が
出そろい,会員の参加を得るとともにその数も増加し,ご同慶の至りであり
ます。これまでの活動は,どちらかと言えば個人の献身的なご尽力によって
実現されてきたと思います。活動を更に活性化させ継続して発展させるため
に,より組織的に活動すべしと言う考え方で,総会において組織構成が改訂
されました。総務委員会は
  「組織管理,文書管理,理事会および総会」
を担当することになりました。私は,これらを遂行するために,当面の重点
事項として,
  「会員サービス,学会の社会からの認知と貢献および理事会運営」
を選んで,それぞれを活性化する仕組みを作り実施したいと考えております。

 最初に「会員サービス」ですが,会員の皆様が今以上に学会を身近に感じ
られ気軽に参加できるようにする必要があろうかと思います。そのためには
研究会やシンポジウムなどの催事をいろいろな手段で,あまねく迅速にお知
らせし会員相互の情報交換を活発にする仕組みが必要と考えております。一
方,本学会の大きな特徴であります「年会費を支払えば,研究会はじめほと
んどの催事に無料で参加できる」ことを喧伝して,会員としての利点を享受
していただくとともに会員増加を図りたいと思っております。

 2点目の「学会の社会からの認知と貢献」でありますが,何はともあれ
  「日本学術会議協力学術研究団体」
の称号を受け,公の立場からの認知を得たいと思っております。
 その上で,最近次々に発生または発覚する社会的な問題(社会保険庁のず
さんな情報処理等)について,問題の本質や解決の道筋などに関し,
  情報システムを「人間活動を含む社会的なシステムである」と認識する
情報システム学会ならではの情報発信ができればと願っております。学会は
個人の資格で参加されているとはいえ,それぞれが組織の一員としての制約
を受けますが,それらに配慮しつつ永続できる形で社会に情報発信すべきで
はないでしょうか。

 3点目の理事会運営についてですが,数多の案件がありますので
   「案件の整理と優先課題の選択,担当部署の明確化と進捗管理」
を行うための仕組みを作り,着実に処理していきたいと思っております。ま
た,第4回総会(2008年)についても,できるだけ早く日取りや会場を
仮決定して,多くの方の参加の下に企画を進めたいと思っております。

 以上,現在考えている事柄をお話しいたしましたが,皆様のご理解の下,
ご支援をお願い申し上げます。

html版は http://www.issj.net/mm/mm0203/0203-1-rk-ku.html
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[2] 第26回理事会報告(2007.6.16)

6月の理事会の議題は次の通りです。

議題1 入退出会員の審議
議題2 学会パンフレットの印刷と配布
議題3 学会基盤整備委員会の新設とメンバー
その他,報告事項

   詳細はこちら→ http://www.issj.net/gaiyou/rijikai.html
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[3] 研究会だより

[3-1]今年度研究会の紹介
  2007年度は以下の7研究会が活動を行っています。

 「人間の情報活動としての業務プロセスの可視化」研究会
                    (主査:宇野沢庸弘)
 「生圏情報システム」研究会      (主査:杉野隆)
 「情報システムのあり方を考える」会  (主査:伊藤重隆)
 「産業界からの論文発表を促進するための研究会」(主査:高木義和)
 「グローバル・アライアンス研究会」  (主査:槇本健吾)
 「重要インフラのICT依存性解析とCIIP(重要インフラ情報防護)
  のあり方」研究会           (主査:渡辺研司)
 「情報社会における小・中・高の(数学教育を含めた広い意味の)
  情報教育を考える会」        (主査:町田彰一郎)

  詳細はこちら→ http://www.issj.net/kenkyuu/kenkyuu.html
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[3-2]「産業界からの論文発表を促進するための研究会」より

 産業界における事例研究論文の候補を募集しています
  *身近にある論文になりそうな事例を紹介ください。
  *論文を著すことは、自分や会社の成長を促すことになります。
  *さらに、論文の生産は情報産業ひいては社会の発展に寄与すること
   なります。
  *気軽にこの研究会に参加して活動と雰囲気を知ってください。

 情報システムの企画・構築・運用に携わる経験やシステム利用に関わる経
験は、他の情報システムに関わる人にとっても貴重な情報となります。
 この貴重な体験を事例研究論文として積極的に発表することは、経験を一
般化する作業を通した自己の知識や能力の向上、および個人の社会的価値の
向上に役立つだけでなく、個人個人の論文が蓄積・共有されることにより日
本の情報サービス産業全体の知識としてその発展に寄与することも意味して
います。

 本研究会では産業界からの論文投稿や執筆相談が少ない現状を踏まえ、現
場で活躍されている会員の皆様による論文作成を促進する活動を行なってい
ます。今回その一環として、候補論文を広く募集いたします。論文作成の意
義を理解頂き、身近に論文になりそうな新しい経験や知見をお持ちの方は気
軽にお問い合わせください。
 論文作成の経験がない場合、どのように書けばわからないというケースが
非常に多いことから、研究会では指導だけでは十分でないと考えています。
著者が独力で論文作成ができる力を身につけられるよう、研究会では候補論
文の具体的な事例毎に、本人を含めて参加メンバーによる多面的な意見交換
を行なっています。

 論文の生産は、その蓄積により日本の情報サービス産業全体の発展に寄与
することから、企業にとっても自社の社会的貢献度が向上することに結びつ
きます。「論文を書く暇があれば新しい仕事を」と考えてしまいがちですが、
目先の仕事に追われていると産業界全体で知識の共有ができず、将来日本に
おける情報サービス産業が立ち行かなくかもしれません。企業の社会貢献も
企業の評価に重要な要素となりつつあることも考慮頂き、企業からの会員の
皆様にも、身のまわりを見直して候補論文となるような事例を発掘する努力
と、論文作成が可能な環境の提供にご協力頂けますようお願いいたします。

 事例研究論文の作成を希望者されるかたは月1回程度開催している研究会
に是非ご参加くださるようお願いいたします。
 参加される場合は、以下の事項を事前にできる範囲で整理しておいて頂け
るようお願いいたします。記述内容に基づいた的確な意見交換や質疑が可能
となります。
 1) 目的:なぜ事例を実行したかの説明など
 2) 背景:先行研究・文献による現状分析(社内だけではなく他社を含め
   た動向・現状など)
 3) 問題点:解決しようとする内容を明確にする
 4) 問題解決の視点:
 5) 解決方法:視点に基づいた方法の提示
 6) 実装内容:試みた内容
 7) 得られた結果

 問合せ先は以下のメールアドレスに、「産業界からの論文発表を促進する
ための研究会」の件名でお送りください。
   takagi■nuis.ac.jp   高木義和(研究会主査,新潟国際情報大学)
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[3-3] 「情報システムのあり方を考える」会の報告書について

 「情報システムのあり方を考える」会が『2006年度研究報告書』を発行し,
5月19日開催の情報システム学会総会で参加者に配布しました。A4版320ペー
ジの同報告書には,昨年度に開催した6回の研究会の議事録が掲載されてい
ます。
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[3-4]「グローバル・アライアンス研究会」の活動について

<今年度の活動状況>
 昨年,マクロでのアライアンス要素の洗い出しを行い,アライアンスを計
画する上で思考すべきフレームと視野を定めました。今年度は,ミクロで,
実際にBtoBのアライアンスを試行錯誤して,研究の成果検証を実地で行って
います。
 同時に,昨年来から続いている東南アジア圏の現地レポートを最新のもの
にアップデートしています。今回はカンボジアについての最新レポートをお
伝えします。カンボジアは中国製品や農産品の迂回貿易経路として活用され
始めているという側面も,最近,帯びてきました。

 以下は,現地に在住しているインサイト・コンサルティングCEO,早川か
らのレポートです。                    (槇本健吾)

<カンボジア現地報告>
 既にプノンペンに1年おります。現地で観察したカンボジアの首都プノン
ペンの今をお伝えします。定量的な厳密さを追及する代わりに定性的にイ
メージ喚起力に富む報告を目指します。
*位置:東南アジアの真ん中にタイがあり,その東がカンボジア,そのまた
  東がベトナム。タイの西がミャンマーで,その南の半島部分がマレーシ
  ア,その先端がシンガポール。タイ,カンボジアの北がラオス,そして
  中国というのが大づかみな地理感です。
*人口:カンボジアの人口は1,300万人ほど,プノンペンの人口は100
  万人。国全体でタイのバンコクの人口とほぼ同じ。プノンペンは日本の
  政令指定都市最低人口くらい,という規模感です。
*民族構成:Wikipediaには,クメール人が90%,ベトナム人が5%,中国
  人が1%。その他の少数民族が4%住んでいるとあります。にはクメー
  ル系カンボジア人,ベトナム系,中華系カンボジア人というべきでしょ
  う。これはカンボジア国籍を有する(とはいえ,出生届もしていな住人
  が多くいるので,戸籍・パスポートがあるという意味ではない)住民に
  関することで,ベトナム,中国からの出稼ぎ者はさらに多くいます。現
  地では中国人は5%いるという統計も見ましたが,その場合の中国人が
  中華系カンボジア人を意味するのか,中からの出稼ぎ者を含むのか,台
  湾系か,大陸系かなど不明です。最貧国カンボジアに,更に中国から国
  境を越えて出稼ぎ者が多数存在していることに注目できます。
                             (早川賢雄)
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[4] 連載「情報システムの本質に迫る」
       第1回「情報は形がない」か?    芳賀 正憲

 日本が基盤ソフトのほぼ100%を輸入に頼っていること,アプリケーシ
ョンソフトを加えても輸出入に圧倒的な格差があることは,かねて問題にな
っていました。国際レベルで見ると,わが国はソフト開発力をもっていない
のです。その上ものづくりの分野と異なり,先進国にキャッチアップしない
うちに中国・インドなど途上国の追い上げを受けています。近年若い人たち
の志望先からも敬遠される傾向にあり,わが国の情報サービス産業は非常に
厳しい局面に立たされています。
 どうしてこのような状態になったのか,根本的な原因としてわが国では,
情報および情報システムの概念が明確になっていないことが挙げられます。
基本的な概念がはっきりしなければ,研究も教育も実務への適用も,効果的
に進められるわけがありません。
 情報および情報システムの概念について,わが国では有識者とされている
人の間でさえ,少なくとも3つの誤解があります。

 第1は,情報をコンピュータ,情報システムをコンピュータシステムとほ
とんど同義に考えてしまうことです。例えば,数年前に高等学校に普通教科
「情報」が設けられましたが,その趣旨は「コンピュータの機能や仕組みの
理解を通してコンピュータを問題解決等に効果的に活用するための考え方や
方法を習得させる」など,コンピュータ一色になっています。
 なぜこのような誤解が生じたのか,それは情報という言葉がわが国ではコ
ンピュータの普及とともに広く用いられるようになった経緯の中にあります。
広辞苑を見ると,1955年の初版では明治以来の「事情のしらせ」の意味しか
書かれていません。しかし,60年代後半の第2版以降,情報はinformation
の翻訳語として説明されるようになり,意味が拡張されます。90年代末の
最新第5版では「媒体を介しての」という語句が追加されました。
 もともと英語では,informationは700年前から用いられており,その語
源はさらにラテン語にさかのぼることを忘れてはなりません。

 第2の誤解は,「情報は形がない」と考えてしまうことです。例えば,昨
年出版されたある大学のテキスト「情報」には,第1章第1節の冒頭に「情
報は形がない」と書かれていて,学者でもそのような認識があることが分か
ります。産業界でも,情報は形がなく見えないのでさまざまな問題が生じる
と,よく言われています。しかしinformationの中にformがあるのですから,
形がないというのは不思議です。
 Informationはinformから派生した語ですが,informのinは「中に」,
formは「形作る,言葉で表す」という意味で,「心・頭の中に形作る」とい
うのが原義です。したがって,情報には形があるのです。形があるからこそ,
その形を表現するためマークアップということが行なわれているのです。
 マークアップは,最近でこそHTMLやXMLを通じてわが国でも有名になりま
したが,もともと数100年来,印刷業界で行なわれてきたことです。しかし,
広辞苑には最新版でさえマークアップは載っていません。オックスフォード
の辞書ではコンサイスにも載っています。わが国の国語関係者の情報に関す
る感度が懸念される一例です。

 第3の誤解は,情報システムの世界は自然科学と様相をまったく異にする,
人間が勝手に定めた約束事の世界,原理原則の存在しない仮想世界である,
したがって体系的な教育は不可能と考えることです。このように考える人も,
学界・産業界に多数います。
 ほんとうにそうでしょうか。例えば力学を考えると,歴史的にさまざまな
学説がありました。ガリレオの頃までは,力,質量,加速度などの概念(ク
ラス)と概念モデル(法則)の抽出が妥当な形ではできませんでした。しか
し,彼らなりにクラスを抽出しモデルを組み立てていたのです。この体系は
力学現象を対象にして,クラスとモデルで認識と判断を実行する,まさに情
報システムと言えます。ニュートンになってようやく妥当なクラスとモデル
が確立できたのですが,実はニュートンのシステムは,スコープに限界をも
っていることがあとで分かりました。このスコープを拡大してシステムの適
用範囲を広げたのがアインシュタインです。このように自然科学といっても,
実は自然を対象に概念や概念間の関係を抽出し,それをもとに認識と判断を
実行する情報システムと考えられます。
 一方,情報システム側から見ると,人類は誕生以来情報システムを組み立
て発展させてきているのですから,創世記以降あらゆる段階で情報システム
の開発はメタ開発であり,情報システム学はメタ学です。メタの世界では1
つ下の世界を客観化し,場合によっては100%論理的な処理さえ可能です。
 基幹システムの要求分析で,既存の伝票・帳票類や業務マニュアルをすべ
て集め,そこからエンティティあるいはクラスを抽出することは普通に行な
われています。既存の伝票・帳票類や業務マニュアルを手がかりに対象世界
を分析しているのですが,観測結果を手がかりに自然を分析するのとどこに
ちがいがあるでしょうか。手がかりがユーザの発話の内容であったとしても,
客観化して分析する限り同じことです。
 A社のシステム,B社のシステム等,正解がないではないかという意見が
あります。しかし,海で軟体動物にタコや貝などいろいろな類がありますが,
別に正解があったわけではなく,DNAの配列の偶然とその後の適応によっ
てさまざまな形に秩序が作られたものです。人間の情報システムに多くのパ
タンがあることも,恣意と適応という同様の進化プロセスで説明されます。
 このように見てくると,自然科学と情報システムに本質的なちがいはなく,
いずれもオントロジー(概念体系)を発展させてきたものです。演繹,帰納,
発想の適用が可能です。

 結論として,情報システムと自然科学は,本質は同じであるのにわが国で
は両者が異なっていると考える人が多く,そのため例えば大学で,体系的な
教育が行なわれず,情報や情報システムに関し基本的な概念を理解しない人
材を輩出し,結果としてさまざまな問題を引き起こしていると言えるのでは
ないでしょうか。

 この連載では,情報と情報システムの本質に関わるトピックを取り上げて
いきます。皆様からもご意見を頂ければ幸いです。

html版は http://www.issj.net/mm/mm0203/0203-4-jhnst01.html
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ISSJメルマガ編集委員会
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 編集委員:上野南海雄,神沼靖子,小林義人,杉野 隆,芳賀正憲,
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