筆者は、ISO/IEC JTC1のSC32(データの管理と交換)(http://jtc1sc32.org/index.htmlを参照)の片隅で、レジストリとメタデータ・メタモデルの標準化に携わっている。日本が提案し,中国・韓国と共同開発した規格群「メタモデル相互運用枠組み(ISO/IEC 19763)」(http://metadata-standards.org/)の一部が、本年2月1日 国際規格(IS)として成立した。
この規格は、異なる場所やドメインに散在するモデルや情報を連携させ共有することを目的としている。特に、今般成立した同規格の第3部は、「オントロジー登録のためのメタモデル」である。オントロジーなどと、おどろおどろしいタイトルであるが、OWL(Web Ontology Language)(http://www.kanzaki.com/docs/sw/webont-owl.htmlを参照)やRDF(Resource Definition framework)(http://www.kanzaki.com/docs/sw/rdf-model.htmlを参照)などで記述された意味要素(言葉)の相互関連を登録し共有することを目的としている。「知の連携基盤」の一部になり得るものと確信している。
昨今、Web2.0 などと喧伝されている概念は、例えば、A.トフラーが唱える「Prosumer」(http://www.kanzaki.com/docs/sw/rdf-model.html)のように、知の連携を通じて、利用者自らが制作者となり多様な生活スタイルを実現し、時には、環境問題など社会的課題にも何らかの貢献ができる、などのことのようである。
また、Wikipediaにみられるように、「非公式な知見の連携により膨大な知」を形成させることでもあるようだ。ここで「非公式」とは、確立された組織や権威によって認められていないものをさす。残念ながら、これまで確立された権威や公的組織が示す価値観に依存し頼ってきた哀れな我々には、5年後、10年後にWebがもたらす姿は想像すらできない。
情報システム学会は、発足後3年を経過したばかりで小規模である。長い歴史をもつ他学会に比してその存在が認知され権威が確立したとは言えない段階にある。 しかし、会員構成に実務家が多いこと、研究発表大会などでも実務家からの発表が多いこと、などを特長としている。手続きや敷居の高い権威に対する抵抗感・遠慮からか、会員諸氏がより非公式なスタイルでの「知の連携」の場を求めているからかもしれない。
大きな研究も小さな仮説設定から始まることを考えると、非公式な段階を如何にサポートするかが学会の使命となってもよい。そのような観点から、本学会でも、論文誌の編纂など、いくつかの部会が活動している。しかし、暗黙のうちに、公式な論文の制作・投稿を想定しているかもしれない。
確かに、論文は学者・研究者の唯一の評価基準である。論文としてキチンと表現されない限り、その研究活動を測ることはできない。しかし、言うまでもないが、最初から、論文が公式な形式的に纏まっている必要はない。また、単著である必要もない。相互啓発による共著とリンクの集合であってもよいではないか。
本学会は、発足時から電子媒体での文書の配布・共有を謳い、本メルマガをはじめ、Blogやテーマ別の議論を可能とする場もできている。小さいながらも、Web2.0時代の学会という形態を整えつつあるともいえる。
かつて、インターネットやメールを電話代わりにしか考えなかった時代もあった。文字フォントも筆記用具(甲骨文字など)が決めた。用具が変わ
れば文字スタイルも変わる。
Web分野におけるAjax、RSS、SemanticWebなどは、会員相互(非会員も巻き込む)の研究活動(知の連携)を大きく変えるものと信じる。新たな視点に立った構築が求められる。
しかし、一方で、複雑ネットワークやスケールフリー・ネットワーク(http://www.tiu.ac.jp/~hori/horilab/index.files/Page1539.html)で指摘されている「優先的選択」特性(http://platbox.sfc.keio.ac.jp/jp/papers/icskbs2004/box-icskbs2004.pdfを参照)によって、学会活動の重心が、特定なトピックスや発表者(テーマ主宰者)に過度に偏ること、その制御が新たな課題となることも想定すべきであろう。
是非、この仕組みを学会活動の中心とする方向の模索・試行を継続して頂きたい。F2F(FaceToFace)の楽しみも維持しながら・・。