「世の中にはこんな職業がある」という切り口で13歳前後から20歳くらいまでの年齢層をターゲットにした村上龍著のベストセラーである。本編にではなく付録に「ITの現状と可能性(伊藤譲一×村上龍)」 というコラムが存在する。「このまま読ませてはいけない!」とITに関わる方々なら,きっと憤るそんな描かれ方がされている。 例えば
「ただいわゆるIT屋さんの仕事は,マニアックで地味な仕事になっていくと思います。」
「新しい技術が出てくると,何万人という単位で雇用が 消える,ITというのは,そんなことが実際に起こる業界なんです。」
「SEというのは,電卓が普及する以前の,そろばんのプロ,みたいなものです。ソフトが一変すると,それ以前のプログラム技術はゴミと化す,みたいなことがよく起こります。」
「SEのような単純労働ではなく,本当はもっとクリエイティブな部分に,子どもや若者の興味を向けるようにしないといけないと思います。」
IT業界で新たなビジネスが起こり,雇用創出が進んでいるビジネスもある。また,IT業界で夢を持って創業し,クリエイティブに活動している人材は沢山居る。
2003年10月に同著は始めて出版され,それまでには無かった切り口により大いに注目され,日本の公共図書館や学校の図書室にも配架されている。伊藤譲一氏はIT業界では著名な人物とあるが,単に伊藤氏が極端にITの仕事を捉えた内容であると放置していてはいけない。私は1ヶ月程前に知人から教えられて知り,出版社に個人的に質問状で誤解がないよう記載を変更すること等を求めているが,予想通り返事は未だない。出版社が一個人のクレームに応じることは,残念ながら可能性として低い。次代を担う子ども達にとってITの職業のブランディング活動を行うことは,IT人材を育成する上で非常に重要と考える。今後,情報システム学会として取り組む重要テーマとすることを提案したい。