多くの企業がデジタルトランスフォーメーション(DX)を進める中,AIの積極的な活用が検討されている.しかし,長年にわたる改善活動で進化してきた生産現場のプロセスにAIを導入する際には,異常時のデータ取得の難しさや全データのセンサリング不可能性などから,高精度な機械学習モデルの構築が困難であり,期待される精度とのギャップが大きな障壁となっている.本研究では,このような課題の解決を目指し,Human in the Loop Machine Learning(HITL)の原理を活用して,人間とAIの協調を実現する運用プロセスのアプローチを提案する.具体的には,化学企業のAI腐食診断システムを事例に,HITLに基づく人間とAIの協調を含む運用環境のシステムアーキテクチャを定義し,評価する.開発ステージで完全に学習を終えなくても,運用ステージでの人間とAIの協調を通じて,運用・開発プロセスを連携させるアーキテクチャに基づき,業務プロセスの中でのAIの有効活用を実践的に報告する.本研究は,AIを効果的に組み込むための新しいアプローチを提供し,現場起点の考察を提供するものである.