情報システム学会 メールマガジン 2010.11.25 No.05-08 [8]

連載 著作権と情報システム 第20回

司法書士/駒澤大学 田沼 浩

1.著作物

[3] 文化庁案「著作権審議会第六小委員会(コンピュータ・ソフトウェア関係)
       中間報告」(12)

IV 保護の内容
 二 著作権
(4)頒布権
 頒布とは、有償であるか又は無償であるかを問わず、複製物を公衆に譲渡し、又は貸与することをいい、映画の著作物又は映画の著作物において複製されている著作物にあっては、これらの著作物を公衆に提示することを目的として当該映画の著作物の複製物を譲渡し、又は貸与することを含むもの(著作権法第2条第1項第19号)をいい、頒布権とは、当該映画の著作物をその複製物により頒布する権利を示すもの(著作権法第26条第1項)である。昭和48年6月の著作権審議会第二小委員会の報告書では、「当分の間は、世界の動向や実務界の契約慣行等を勘案しつつ、プログラムに頒布権を認めるべきかどうか、頒布権の及ぶ範囲をどうすべきか等について検討を進めていくべきであると考える」とされていた。当時の第一小委員会で審議されていた貸与権の創設(著作権法第26条の3)によって、中間報告では、頒布権を認めなくても貸与権で代替できるので、当面の措置としてプログラムの頒布権は見送るべきとの見解が示された。

まとめ
 以上の結果、中間報告では、著作権法において、プログラムの複製権について特別の規定は設けず、情を知って複製されたプログラムを実行する行為を著作権を侵害する行為とみなす規定を設けることを求めている。
 中間報告に沿って、著作権法第113条を改正し、同条第2項が新たに設けられた(昭和60年6月14日法律第62号により改正)。
【著作権法第113条第2項】
プログラムの著作物の著作権を侵害する行為によつて作成された複製物(当該複製物の所有者によつて第四十七条の三第一項の規定により作成された複製物並びに前項第一号の輸入に係るプログラムの著作物の複製物及び当該複製物の所有者によつて同条第一項の規定により作成された複製物を含む。)を業務上電子計算機において使用する行為は、これらの複製物を使用する権原を取得した時に情を知つていた場合に限り、当該著作権を侵害する行為とみなす。

引用・参照文献

・著作権法概説第13版、半田正夫著、法学書院、2007年
・著作権法、中山信弘著、有斐閣、2007年
・ソフトウェアの法的保護(新版)、中山信弘著、有斐閣、1992年
・岩波講座 現代の法10 情報と法、岩村正彦、碓井光明、江崎崇、落合誠一、鎌田薫、来生新、小早川光郎、菅野和夫、高橋和之、田中成明、中山信弘、西野典之、最上敏樹編、岩波書店、1997年