情報システム学会 メールマガジン 2010.8.25 No.05-05 [5]

第5回懇話会 開催報告

企画委員会 伊藤 重隆・甲斐荘 正晃

1.開催日時  平成22年7月28日(水) 18時〜20時
2.場所    専修大学神田キャンパス 神田校舎7号館771教室
3.話題提供者 桐谷恵介氏 株式会社インテック シニア・コンサルタント
4.出席者   14名
5.テーマ   新しいCIOの役割と方法論としてのグランドデザイン
        〜現場での改革事例(IT、業務改革、意識改革)〜

6.発表概要

・冒頭に(株)インテック社とITホールディングスの紹介があった。
・はじめに、現状認識としてITの導入現場で起こっていることとして、情報システム(レガシー)更改を契機として業務改革を実現したいが、プロジェクト立ち上げ時に、経営を始め、社内を納得させる実効的な基幹系業務システム導入計画立案が難しい。
CIOへITだけでなく業務や社員意識までに踏み込んだ改革が求められている。
・経営者からシステム化への投資効果が不明、ソフトウェアは見えないので投資基準が理解しがたい、現状に何か問題があるのか、売上増となるか、コストは削減できるか、早い時期にシステムは完成できるのか等々の不信感があり、目的妥当性を十分に説明する必要がある。
・ 現在、CIOは自社にマッチした情報改革、業務改革、意識改革を進める具体的な構想を描き、実践して行く事が役割として求められている。
・この役割をサポートする方法論としてi-グランドデザイン(IGDと略称)が紹介された。
・IGD活動の結果として、可視化とヒアリング診断による社内実情理解、具体的な数値目標設定(ROI)、業務と業務プロセスの評価と整流化・標準化実現、業務改革構想・システム改革構想策定、業務・IT機能で統制強化された業務フロー実現が可能となる。IGD標準活動期間は、4.5ヶ月。(なお、IGD活動は、売上1千億円、又、社員1千人程度に適用が効果的)
・事例として親会社依存率90%、売上約3千億円、従業員約15百名の工事会社にIGDを適用したケースの発表があった。「事務業務効率阻害要因の徹底排除による価値創造」、「多能化と協力体制を実現できるシンプルな業務プロセス確立」、「親会社依存でない次世代リーダー育成」等を柱とした業務改革計画、情報システム計画、意識改革計画がCIOのリーダーシップとPMO(業務システムを熟知する情報システムメンバーが主体)による指導により2006年12月〜2007年3月構想立案が完成し、以降、2006年7月〜2009年3月で新基幹ITシステムが開発・導入されたが、同時期に2回に亘る業務改善活動が実施され効果をあがった。
・成功要因の一つは、下記のCIOの振る舞いである。
 (1) 業務改善及び情報システム担当を率い、業務改善先行でシステム構築を実施
 (2) 改善の為の可視化を重要視、フロー検証、整備を推進
 (3) ボトムアップの意見を真摯に取り入れた
 (4) 社内メンバー不足を外部ベンダーから調達し、情報システム責任者もIDG活動後ではあるがシステムベンダーから転籍させた。

〈主な質問他〉

・ ROIを定義するのは、むずかしいのでは? SCMの事例紹介あり。
・ 事例の親会社に依存する子会社は、経営ビジョンが不明確なことが多くないか。
又、モチベーションの向上はむずかしいのでないか。
・ PMOでなくCIOに直結するCIOオフィスの考え方はないのか。
・ 新しいCIOの役割が未だ理解できないが。
・ 会社の規模によりCIOの役割は異なる、との考えはないのか。
・ 事例にある2年間かけて実装するのは期間として長すぎないか。
・ 会社の意識改革事例として「飛びつき症候群」の是正は同感である
以上