情報システム学会 メールマガジン 2010.1.1 No.04-10 [1]

巻頭言 「豊かな情報システムを求めて」

情報システム学会会長  竹並 輝之
(新潟国際情報大学)

 明けましておめでとうございます。
 昨年は、情報システム学会も5年目を迎え、12月には第5回全国大会・研究発表大会を青山学院大学において198人の参加を得て盛大に実施することができました。学会恒例のイベントとしては、5月に総会および講演会、7月にシンポジウムを開催し、そのほかに懇話会や各種の研究会を会員の皆様の参加のもとに開催してきました。また、オンラインジャーナルとして学会誌を年2回発行し、メールマガジンを毎月お届けしています。メールマガジンは読み応えのある記事が多く、皆様のご要望にお応えしてバックナンバーを公開いたしました。
 また、学会事務の円滑な運用を目的に、事務所を都内に開設し、事務局機能を強化しました。学会ホームページの充実、更新頻度の向上、サーバのセキュリティ確保も実現しつつあります。今年は、学会の社会的信用度を確保するために法人化を検討し、準備を進めています。本年も、学会の活性化に努めてまいりますので、会員の皆様のご協力よろしくお願いいたします。
 さて、昨年は長く続いてきた政権が交代し、政治の世界にもパラダイムシフトが起こる兆しを見せています。新政権は、そのパラダイムシフトを「コンクリートから人へ」というスローガンで表現し、箱もの重視の投資から利用者重視の投資に内容を見直そうとしています。これを情報システムに置き換えてみると、我々はこの50年来「ハードウェアからソフトウェアへ」、「コンピュータシステムから情報システムへ」などをスローガンに情報化を進めてきて現在にいたっています。しかし、まだまだ効率中心、開発者中心、ネット熟練者中心の情報システムが幅を利かし、システムトラブルも後を絶ちません。社会を豊かにする情報システム、人間(利用者)中心の情報システムへのパラダイムシフトが求められているのではないでしょうか。今年は皆様と一緒によいスローガンを考えて、学会の場で議論できればよいと思います。
 先日、本学会の前身であるHIS(Human Oriented Information System)研究会を永く主宰してこられた浦昭二先生(本学会名誉会員、慶應義塾大学名誉教授)から、先生の情報システムに対する思いを表した以下の言葉を紹介していただきました。村田早耶香さん(児童買春防止NPO代表)が「子供の笑顔、自分で守る」と題して朝日新聞(2009.9.19)に投稿された随想の一節です。
「願い・・・豊かな人間になってほしい――豊かとは、他人の痛みを自分の痛みと感じられること、そして、世界の出来事を自分と関係のあることと思える視野の広さのあること」
 我々は、冒頭を「願い・・・豊かな情報システム技術者になってほしい」あるいは「願い・・・豊かな情報システムを作ってほしい」と読み替えてみたらいかがでしょうか。

(平成22年1月1日)